ヤマトがアマゾンに1.7倍の運賃値上げと総量抑制を要請、ヤマ場は9月
- 企業・経済
- 2017年7月25日
労働現場がパンクしたヤマト運輸と、その引き金になったアマゾンとの交渉が大詰めを迎えている。関係者によると、ヤマトがアマゾンに対して、現状の1.7倍への値上げを要請しているという。
ヤマト運輸は、10月には運賃の値上げと総量コントロールする方針を打ち出している。大口の法人客にも値上げを要請しており、アマゾンとて例外ではない。
ネット通販の王者であるアマゾン・ジャパンの宅配便数は、年間3億個にものぼる。このうち4分の3にあたる2億2000万~3000万個をヤマト運輸が、残りを日本郵便が運んでいる。
関係者によると、ヤマトが受けているアマゾンの荷物の平均単価は270~280円。これは2013年に佐川急便が利益が出ないとしてアマゾンの仕事から撤退したときの価格に等しい。「タリフ」と呼ばれる運賃表の4割という水準だ。
にもかかわらず、その価格で受けてきたのは、「アマゾン・ジャパンが物流機能の一部を負担していたから」(ヤマト関係者)だという。アマゾンが配送先のエリア別に仕分けして、基幹センターに持ち込んでいるというのだ。それとて、サービス残業に支えられてこそ見合う価格だったわけで、問題が表面化したことで、この単価では採算が合わなくなった。
関係者によると、ヤマトはアマゾンに対して、現状単価の270~280円から470円への値上げを要請している。「アマゾンは、短期的にはヤマトの要求を飲まざるを得ないだろう」と言う。直近でもアマゾンは7月10日から年に1度の大セール「Amazonプライムデー」を実施したばかり。荷量が通常期よりも多くなるため、物流現場にかなりの負荷がかかるが、これも「ヤマトに協力をお願いして、なんとか乗り切れた」という。
さらに、アマゾンを悩ませているのは、ヤマトが値上げのみならず総量コントロールの対象にしていること。アマゾンに対して、現状受けている2億2000万~3000万個の宅配便のうち、4000万~5000万個は受けられないと伝えているという。
なお、こうした数字について、ヤマト運輸、アマゾン・ジャパンともに「個別交渉の内容については答えられない」と回答している。
目先、アマゾンの最大の課題は、ヤマトの改革に伴いあぶれる4000万~5000万個の荷物をどうするかだ。
470円の単価に、さらなる追加料金を支払ってヤマトに委託するのか、それとも日本郵便に委託するのか。アマゾンは、自前で物流網を築くとしているが、「そんなにすぐにはできない。4~5年は要するだろう」(物流関係者)という。
ヤマ場は、両社の契約が更新される9月。猛暑をますます熱くさせる駆け引きが続きそうだ。
(ダイヤモンドZAi編集部 須賀彩子)
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