JT、欧米ライバルに劣る株価 国内たばこ苦戦
- 企業・経済
- 2017年2月6日
日本たばこ産業(JT)が6日発表した2016年12月期連結決算(国際会計基準)は純利益が前の期比13%減の4216億円だった。今期も減益を見込む。煙が出ない「加熱式たばこ」で米競合大手に出遅れ、既存の紙巻きたばこの国内販売も急減するためだ。投資家の成長期待はしぼみがちで、株価は欧米ライバル勢の後じんを拝する場面が目立つ。米大統領選当日の昨年11月8日から足元までの株価騰落率を見ると、優勝劣敗が鮮明だ。JTは7%安に対し米フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)が3%高、米レイノルズ・アメリカンと経営統合で合意した英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)も8%上昇した。
投資家が懸念しているのは、JTの祖業であるたばこの国内販売に回復の兆しが見えないことだ。17年12月期の国内販売数量見通しは前期比10%減の960億本と、大台の1000億本を初めて割り込む。「東日本大震災の影響があった11年度を除けば、過去最大級の落ち込み」(小泉光臣社長)という。
主力商品「メビウス」シリーズの値上げや、「ナチュラル・アメリカン・スピリット(アメスピ)」を投入したが、消費者の健康志向などから販売数量の落ち込みが続く。これまでも販売本数は減少傾向をたどってきたとはいえ、部門の営業利益はここ数年、増益を確保し業績全体の要となってきた。それが今期は一転、6%減益を見込む。成長分野の加熱式たばこではPMIの「アイコス」に押され気味だ。日本国内でアイコスが発売されて約1年。紙巻きを含む国内たばこ市場全体の5%まで、市場シェアを伸ばした。
アイコスが業績をけん引してPMIは17年12月期の1株当たり純利益が前期に比べ最大8%増える見通し。5%増だった市場予想より高い伸び率となる。先行者利益を確実なものにするため、アイコス用のたばこ供給能力を500億本と、現在の3倍以上に高める戦略も打ち出した。
「攻める欧米ライバル各社と劣勢に立つJTとの格差は大きい」(外資系投資顧問)と受け止める投資家は多い。
JTも6月以降、加熱式たばこ「プルーム・テック」を東京都内の一部エリアで発売する。「供給能力が高まるのを待つため、発売を従来の計画より数カ月遅らせている」(小泉社長)。万一の品切れを避けるための判断という。プルームの本格投入で欧米ライバル勢と真正面勝負を挑む。
「たばこでの成長には限界がある」(いちよしアセットマネジメントの秋野充成氏)との声をよそに、JTは今期、減益下でも年間配当を前期実績から10円積み増し140円とする方針。「プルーム・テックの伸びで18年12月期以降、1ケタ後半の増益率確保には手応えがある」(小泉社長)という。医薬、食品などの多角化経営を進めてきたJTにとって、祖業の真価が試される局面だ。
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