自宅用に「ついで買い」、同じ商品を「共感買い」 変わるお中元
- 政治・経済
- 2024年6月7日
百貨店のお中元商戦が本格化している。近年は仕事の取引先や親類への贈答だけでなく、親しい友人らへの気軽な贈り物、自分へのご褒美といったニーズも生まれている。
◇「価格高騰のオリーブ油を」 三越伊勢丹ホールディングス(HD)は5日、日本橋三越本店(東京都中央区)に特設コーナーを開設。開店前には従業員が浴衣やそろいのはっぴを着て「エイエイオー」と気合を入れた。
午前10時に開店すると、商品を求める客が続々と来店。初日の来店客は、既に買う商品が決まっているケースが多く、受付カウンターはすぐに順番待ちの行列ができた。インターネット販売が増える中、年配客が多い三越では店舗需要も約半数と根強いという。
千葉市の主婦(70)は、かつては職場の上司ら6、7人に贈っていたというが、最近は親類や親しい人の3、4人に落ち着いたという。予算はそれぞれ1万円で「年配の人もいるので健康によい、最近の物価高で価格が高騰しているオリーブオイルを選ぼうと思う」と話した。
◇市場縮小 若年層取り込みを 市場調査会社の矢野経済研究所によるとお中元市場は、2019年の7210億円から24年に6560億円まで縮小する見通しだ。お歳暮市場も縮小が続く。一方で、ギフト市場全体は20年の9兆8905億円から拡大し、24年は11兆20億円の見込みだ。同社は「儀礼的なギフトとしては縮小傾向にある一方、親密な間柄などでは重要度を増している」と分析する。
百貨店もこうした消費者ニーズを捉えようと商品やサービスを工夫する。
三越伊勢丹HDは今年、若年層の取り込みを意識した商品を強化した。子供向け工作番組のクリエーターらがデザインしたカラフルな箱が目を引く「OH!SUMMER」(3000~5000円台)は、中に人気の菓子を詰め、食べ終わっても箱で遊べるようにした。企画を担当した同社の古口晃久さんは「自宅にお中元が届くという経験がない若い人も多い。届いてふたを開けたときのわくわく感を楽しんでもらいたい」と意気込む。
お中元は、普段手にしない商品を楽しむ「プチぜいたく」の機会でもあるようだ。同社によると、お中元を贈る際に自宅用も買う「ついで買い」や、贈り先と同じ商品を自分用にも買って感想を共有する「共感買い」も増えているという。
◇物価高対策 「好きなものを手軽にお取り寄せする傾向は、最近のお中元にも見られる」と話すのは、そごう・西武の担当者だ。インターネット上でのお中元商品の販売は、自分へのご褒美や、時期を問わないカジュアルな贈り物など多様なニーズを生んでいるという。同社は自宅での消費や足元の物価高を意識し、総菜や飲料など普段使いの商品を集めた「ご自宅用特別お買い得品」コーナーをネット専用で設けている。
◇「買いやすさ」で売り上げ増 お中元・お歳暮市場が縮小傾向の中、「買いやすさ」が支持され、売り上げを伸ばしているのが京王百貨店だ。東京西部を中心に計8店舗ある小型店は23年のお歳暮の売り上げが計前年比1割増と好調だ。同社の担当者は「都心まで行かずに百貨店のギフトを贈れるとして、新規の利用が大きく伸長した」と明かす。
こうした来店客をネットへ誘導する施策も展開。高齢者など操作に不慣れな人でも利用できるよう、パソコンやスマートフォンでの購入を遠隔サポートする手厚いサービスも導入して売り上げ増を図る。
毎日新聞より転用
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