児童手当の拡充、24年度から 「こども未来戦略方針」政府素案
- 政治・経済
- 2023年6月2日
政府の「こども未来戦略会議」(議長・岸田文雄首相)は1日、少子化対策の具体化に向けた「こども未来戦略方針」の素案をまとめた。来年度から3年間で集中的に取り組む「加速化プラン」は年間3兆円台半ばの予算規模(事業費ベース)とし、目玉政策である児童手当の拡充は、2024年度からの実施を目指す。岸田首相が掲げる「子ども予算倍増」については、こども家庭庁の今年度予算(約4兆7000億円)をベースとし、30年代前半での達成を目指す。一方、裏付けとなる財源確保策の具体化は先送りした。
加速化プランでは、児童手当などの経済的支援に1・5兆~1・6兆円▽保育サービスの拡充に0・7兆~0・8兆円▽共働き・共育ての推進に0・7兆~0・8兆円▽子どもの貧困・虐待対策などに0・5兆円程度――を充てる。
児童手当は現行では中学生までが対象だが、高校生にも新たに月1万円を支給する。現在は3歳~小学生を対象としている第3子以降への加算は、0歳~高校生に拡大し、額も月3万円に倍増させる。所得制限も撤廃する。高校生を対象に加えることに伴い、16~18歳で1人年38万円の扶養控除の考え方を整理する。
保育サービスでは、保育士の配置基準の改善を図る。親の就労状況にかかわらず、保育施設を利用できる「こども誰でも通園制度」について、24年度からの実施を目指す。育児休業給付は最大28日間、休業前の手取りの実質10割に引き上げる。各企業の育休取得状況に応じた助成の加算も検討。2歳未満を育てる短時間勤務者に対し、新たな給付も創設する。いずれも25年度からの実施を検討する。
給付型奨学金の対象を、24年度から多子世帯や理工農系の学生の中間層(世帯年収約600万円まで)に拡大する。
加速化プランの財源確保に向けては、消費税などの増税はせず、徹底的な歳出改革を行うとした。社会保険料への上乗せを念頭に置いた「支援金制度」も盛り込んだが、詳細については年末に先送りした。安定財源についても具体的な言及は避け、「28年度までに確保する」としている。財源が不足する間は「こども特例公債」を発行する。
また、子ども関連予算の収支を明確にするために、財源を一元的に管理する新たな特別会計「こども金庫」も創設する。
岸田首相は会議で、歳出改革への取り組みを強調したうえで「国民に実質的な追加負担を求めることなく、少子化対策を進めていく」と述べた。【小鍜冶孝志、岡村崇】
加速化プランのポイント
▽具体的な施策
・年3兆円台半ばの予算規模を確保
・児童手当の拡充は2024年度中からの実施を検討。所得制限の撤廃、支給期間を高校卒業まで延長
・26年度をめどに出産費用の公的保険適用の導入を検討
・親の就労に関わらず時間単位で利用できる通園給付「こども誰でも通園制度(仮称)」を24年度から本格実施
・出生後に最大28日間、男女とも育児休業給付を手取りの10割相当へ引き上げ。25年度からの実施目指す
・時短勤務の賃金低下を補う「育児時短就業給付(仮称)」を25年度からの実施目指す
・授業料等減免と給付型奨学金を24年度から中間層(世帯年収約600万円)の多子世帯や理工農系の学生などに拡大
▽財源の確保
・徹底した歳出改革などで、実質的に追加負担を生じさせないことを目指す
・「支援金制度(仮称)」を構築し、詳細について年末に結論を出す
・加速化プランの実施が完了する28年度までに、少子化対策の安定財源を確保
・財源を一元管理する新たな特別会計「こども金庫」を創設
毎日新聞より転用
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