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スルガ銀行、セゾンとの提携に賭ける「再出発」 ビジネス転換とカード脱却、両社の思惑が一致


異業種との提携に活路を見出すスルガ銀行(撮影:尾形文繁)© 東洋経済オンライン

スルガ銀行は5月18日、ノンバンク大手のクレディセゾン(以下、セゾン)と資本業務提携を締結したと発表した。セゾンはスルガ銀株の15.12%(171億円)を取得して持分法適用会社とし、スルガ銀もセゾンに4.44%(155億円)を出資する。

スルガ銀にとってセゾンは「2人目」のスポンサーだ。1人目は2020年5月に資本業務提携を結んだ家電量販大手のノジマ。共同店舗の設置やフィンテック事業での提携などを目指したが、目立った成果は上がらず2022年3月に提携を解消。ノジマから自己株を買い戻していた。

2018年に発覚した投資用不動産ローンをめぐり、いまだ再建途上にあるスルガ銀。一度は手をさしのべたスポンサーをふいにした同行だが、今後の再成長を考えれば、新たなスポンサーとの提携は時間の問題だった。

別のスポンサーを模索

「異業種との連携にはたいへん積極的だ。制限を設けず、積極的に探っていきたい」。ノジマとの提携解消発表から2カ月後の2022年5月。スルガ銀の嵯峨行介社長は決算説明会で業務提携に意欲を示した。

ノジマとたもとを分かったスルガ銀だったが、遠からず別のスポンサーと組むという見方はくすぶっていた。ノジマから買い戻した自己株式約18.8%を、スルガ銀が消却せずに残していたためだ。実際、今回の提携ではスルガ銀の自己株がセゾンに付与される。

スルガ銀の業績を見ても、提携を通じたテコ入れは不可避だった。経常利益はピーク時の2017年3月期の582億円から、2023年3月期には132億円にまで縮小。高金利の投資用不動産ローンというお家芸が、事実上封じられたためだ。

「金利は高いが、融資は受けられる」。かつてのスルガ銀は、ほかの金融機関から融資を断られた投資家の駆け込み寺だった。属性が悪かったり、すでに借り入れがあったりする投資家にも手を差し伸べる代わりに、高い金利を設定するハイリスク・ハイリターンの融資を武器に、地銀随一の高収益体質を誇った。

ところが、2018年にシェアハウスをめぐる不正事案が発覚して以来、スルガ銀は一転してリスク抑制的となる。2019年11月に策定した中期経営計画では「ミドルリスク・ミドルリターン」を標榜し、顧客層も従来のマス層から富裕層へと軸足を移す方針を表明した。

選別姿勢を強めた結果、貸出残高は縮小の一途をたどった。過去の好採算なローンが次々に返済されていき、利ザヤも低迷。そんなスルガ銀に狙いを定めたのがセゾンだ。

カード会社から脱皮するクレディセゾン

クレジットカード会社として著名なセゾンだが、収益構造を見ると印象は変わる。「総合生活サービスグループへの転換」を掲げ、カード会社からの脱皮を図っているのだ。2023年3月期の事業利益609億円うち、祖業であるクレジットカード事業が含まれる「ペイメント」の稼ぎは3分の1にすぎない。

今やセゾンの稼ぎ頭は不動産やそれに伴う金融の事業だ。投資用不動産ローンや長期固定金利住宅ローンのフラット35、家賃保証などで構成される「ファイナンス」や、子会社の不動産賃貸事業が該当する「不動産関連」でセゾンの事業利益の過半を占め、不動産に強いスルガ銀とは親和性があった。

異業種との提携に活路を見出すスルガ銀行(撮影:尾形文繁)© 東洋経済オンライン

2023年2月、スルガ銀とセゾンは住宅ローンの保証で業務提携を結んだ。これを契機に両者はさらなる協業の余地を模索し、今回の資本提携に至ったわけだ。

不動産という縁で結ばれた両者だが、過去の不正事案に対するスルガ銀の「みそぎ」がある程度済んだとセゾンが判断したことも、後押ししたようだ。

スルガ銀は2018年3月末時点で2035億円ものシェアハウスローンを抱えており、不良債権化すれば経営危機に発展する懸念があった。ところが、投資家との和解が成立したことを受け、2020年からローン債権の一括売却を実施する。

債権譲渡は2022年9月までに計4度実施され、計1655億円の売却が完了した。残るシェアハウスは賃貸物件として安定稼働しているものもあり、スルガ銀は通常の投資用不動産ローンと同様のリスク管理区分に移管。今後、追加で費用が発生する可能性は低くなった。財務面でのシェアハウス問題にケリがついたことは、セゾンがスルガ銀への出資に踏み切る好材料になった。

一方、15%という出資比率にとどまったのは、その後に不正案件が顕在化した1棟アパート・マンションローンが響いた可能性がある。こちらは現在も弁護団との交渉が継続中で、スルガ銀はこうした「組織的交渉」を行っている投資家向けの1棟ローン債権を904億円(2022年末時点)抱える。

セゾンは3月から4月にかけて、スルガ銀の資産査定を行った。係争中の債権については担保や引き当てなどで9割以上が保全済みで、スルガ銀側は「早期解決を目指す」という説明をセゾンに行っている。

とはいえ、交渉の着地点はいまだ見えない。今回の出資比率からは、持分法適用会社としてスルガ銀の利益をグループ取り込めるギリギリの水準である15%の出資に抑えたいという、セゾンの意図が透ける。

ビジネスモデルは転換できるか

提携により、再出発を図るスルガ銀。スルガ銀が実行する住宅ローンにセゾンが保証を付けたり、セゾンのクレジットカードをスルガ銀の顧客に販売したりする協業を描く。

加えて、セゾンは投資用不動産ローンを実行する「セゾンファンデックス」や不動産開発を担う「セゾンリアルティ」も抱えており、スルガ銀の本丸である投資用不動産分野でも協業の余地がありそうだ。

スルガ銀が2023年4月に公表した新中期経営計画は「Re:Start 2025」と銘打つ。2025年までに不正案件の処理やビジネスモデルの転換を進めて再出発を図りたい構えだ。セゾンとの提携は、その試金石となる。

東洋経済オンラインより転用

東洋経済オンライン


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