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「全く英語が話せない森さんのせいでマラソンが…」オリパラ談合を主導した森泰夫容疑者(55)の評判は“コミュ障なパワハラ上司”《ついに逮捕》


 東京五輪・パラリンピックをめぐる談合事件で、東京地検特捜部は8日、大会組織委員会(組織委)の大会運営局の元次長・森泰夫容疑者(55)や電通スポーツ局長ら4人を独占禁止法違反の容疑で逮捕した。

 昨年の時点で組織委元理事で元電通の高橋治之被告(78)や、KADOKAWA、AOKIなど大会スポンサーの企業トップら計15人が受託収賄罪や贈賄罪で起訴されていたが、ついに談合の最深部に捜査が及んだことになる。競争入札に見せかけた“出来レース”の闇が明らかになりつつある。社会部記者が解説する。

森泰夫容疑者 日本記者クラブHPより© 文春オンライン

否定していた「談合の意図」を一転して認める

「今回逮捕された森容疑者は、電通の担当者とともに競技会場ごとの受注候補をまとめた一覧表を入札前から作成しており、実際の入札でも落札した1社しか参加しないケースがほとんど。落札の結果もほぼ一覧表の通りになったようで、価格競争をせずに不当に受注額を吊り上げる“談合”があったと見られています。当初、森容疑者らは一覧表について、『競技会場の受注に穴が開かないように、少なくともこの会社だけは入札に参加して欲しいという意味で作った』と談合の意図を否定していましたが、その後の調べで『受注側もこれに基づいて応札してもらえるだろうと思っていた』と、やや曖昧な形で意図を認めています」

 森容疑者は1991年に横浜国立大を卒業し、東急電鉄で社会人経験を積んだ後、「日本陸連では早稲田閥が強い」という理由もあり、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に進学。元内閣官房オリパラ事務局長の平田竹男研究室の「一期生」となり、2007年に卒業した後は、日本陸上競技連盟事務局で業務に邁進することになる。

 派手な経歴というわけではない森容疑者だが、2014年にオリパラ組織委に出向する前の陸連時代から、彼の周辺ではトラブルが絶えなかったという。

「森さんは陸連時代には勝手にビジネスクラスで海外出張に何度も行くなど幹部としては素行が悪く、東京マラソン財団に出向していたのもそれが原因だったと言われています。スポーツ界で顔がきく平田さんの覚えもめでたく出世コースだったはずが、そのレールから自分で外れたことになります。おまけに陸連の事務局長に森さんのライバルが就任したこともあって、陸連に戻る道は断たれていました。つまりオリパラは森さんにとって“ラストチャンス”だったんです」(組織委関係者)

全く英語が話せず、マラソンを東京で実施できなかった“戦犯”に

 しかし出向先のオリパラ組織委でも強引な手法は変わらず、周囲からの評判は良くなかったようだ。組織委関係者が匿名を条件にこう話す。

「社交的とはとてもいいがたく、よく言えばまじめ、率直に言えば暗い人でした。組織委には東京都などから多くの公務員も出向していたのですが、『森さんが一番公務員っぽいよね』と囁かれていました。マラソンを東京で実施できず札幌で実施することになったのも、全く英語が話せない森さんが世界陸連とうまくコミュニケーションが取れなかったから、と言われています」(同前)

 そして逮捕案件にもつながる“金遣いの汚さ”や、スポンサー企業との距離の近さも際立っていた。

「組織委は公益財団法人ですから、外部の人と食事をする時は1円もご馳走になってはいけないし、贈り物もダメなのは常識。研修でも厳しく教えられるのですが、森さんはスポンサー企業に札幌出張の高級ホテル代や食事代を払わせたことがあるようです。後にスポンサー企業に役員待遇で迎え入れらたのですが、その会社には今月8日に家宅捜索が入っています。予算を切り詰めるために自腹でカプセルホテルやマンガ喫茶に泊まるような職員もいる中で、『トップがそんなことをやるんですか』とみんな呆れかえっていましたよ」(同前)

 陸連時代に平田氏の庇護を得たように、組織委内で発言力を持っていたのは、苗字がおなじ“あの政治家”の影響もあったようだ。

「俺は森喜朗の親戚だぞ!」

「『俺は森喜朗の親戚だぞ!』と周囲に威張り散らしていたんです。あれは本当なんですかね……? 何にせよとにかく高圧的なので、組織委でも『森派』と『反森派』がいました。森さんは自分にすり寄って来る人間には優しくするけれど、意見を言ってくる人間は怒鳴りつけたり部署異動させるような、典型的なパワハラ上司タイプ。スポンサー企業から出向している人に対しても偉そうにしていて、周囲はハラハラしっぱなしでした。『自分はスポーツイベントに精通している』『組織委の初期から参加している』と豪語していましたが、逮捕されるようでは元も子もありません」

 組織委の中には公務員や大手企業からの出向組などコンプライアンスを重視するメンバーもおり、森容疑者の態度に疑問を持ち、談合に異を唱える者もいたというが、彼らの声が聞き入れられることはなかった。

「どの競技会場をどの会社に割り振るかは、森さんが決めていました。本当にそうなのかはわかりませんが森喜朗元会長との親戚関係を公言し、自分の意向は森元会長の意向だと匂わせていたので、代理店も文句を言いづらかったようです。もちろん関係者からは『このやり方はおかしい』という声もあがり、一部の広告代理店の“良識派”は『競争入札でお願いしたい』とも主張しました。だけど森さんや電通幹部はこの声を完全無視。これまでのサッカーやマラソンの大会での成功体験が、彼らを傲慢にしていたのだと思います」

 スポーツの祭典をめぐる談合汚職事件。真相が解明される日は来るのだろうか。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

「文春オンライン」特集班より転用


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