「紅白見ない」がトレンド入り 若者受けを狙った人選でNHKは紅白離れを止められるのか
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- 2022年11月26日
© NEWSポストセブン 提供 昨年に続き「若者シフト」な出場歌手が並んだNHK紅白歌合戦(イメージ、時事通信フォト)
臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、10組が初出場となった第73回紅白歌合戦の出場歌手をめぐりSNSで目立った不満の声について。
【写真】”こたつでみかん”が定番だったかつて。テレビを家族で囲む風景
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「今年は見ない」、周りではそんな声ばかりが聞こえてくる。そう言いたくなるのもわかる。「第73回NHK紅白歌合戦」の出場アーティストが11月16日に発表されたのだが、新しい人たちが多すぎるのだ。
昨今のNHKは、若者シフトの方向で出場アーティストを選考してきた。その傾向がここにきて一気に加速したようだ。結果、「誰が誰やらさっぱりわからない」「聞いたことのない名前のグル―プばかり」「同じような傾向のアーティストばかりでつまらない」と、周辺ではシニア世代を中心に早くも紅白離れが始まっている。
大晦日に家族で集まり「今年はこの歌が一番」「この衣装はいい」など批評しあった紅白、流れる歌に合わせて家族で口ずさんだり、懐かしんだ紅白、歌手たちが出場できることを名誉とばかりに感極まる様子を、あぁだこうだと言いながら一家で楽しんだ紅白は過去になったようだ。
SNSでも同じような事態が起こっているらしい。出場歌手たちの顔ぶれに不満が相次ぎ、「紅白見ない」がトレンド入りしているというのだから、同じように感じている人たちが多いということだろう。
そうなると、動画配信を中心に活動するアーティストの出場を増やして過去最低の視聴率を記録した昨年を挽回しようとするNHKの「希望的観測」は、外れかねない。希望的観測は、物事を自分にとって都合のよい方へ考える傾向だからだ。昨年の失敗は、活かされていないようだ。
だがSNSやツイッターにそんな書き込みがあふれているという事は、”見ない”といっているのが、必ずしもお年寄りや年配の人たちだけではないということになる。SNSにすすんで書き込みをするお年寄りはごく少数派だろうし、そもそも不満を持つ人たちは、今まで見ていたから、”見ない”とコメントしている可能性が高いからだ。
今の若い人たちは、ダウンロードやストリーミングで自分の好きな時に好きなアーティストの曲を聴く傾向が強い。それは紅白にも当てはまるのではないか。好きなアーティストは見ても、数時間もの番組を視聴し続けるとは考えにくい。だが長年、紅白を見続けてきたシニア世代の人たちは違う。歌手だけではなく、番組として楽しんできた。そういう人たちと一緒に若者もテレビを囲み団欒するのが紅白の良い所だったのに、新しいアーティストを増やしてシニア世代の人たちまで見なくなったらどうなるのだろう。
NHKには視聴率だけではなく、若者のテレビ離れを危惧し、若い視聴者を意識した番組作りで将来的な受信料を確保したいということもあるらしい。その方針が色濃く表れたのが、紅白歌合戦なのだろう。NHKの受信料は家にテレビが置かれていなければ徴収することができない。しかし若者の間では、テレビを持たない、持っていないという層が増えつつあるといわれている。パソコンやスマホでドラマも映画も見られるからだ。
これからの日本で人口が増加するのは圧倒的にシニア層で、受信料を払うのもシニア層が増えるはず。そんなシニア層をおいてけぼりにして、大丈夫ですか、NHKさん?
NEWSポストセブンより転用
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