【柔道】全日本初Vの斉藤立 父・仁さんの映像から引き継いだ “執念” 「こういう選手にならないと」
- スポーツ
- 2022年4月30日
強さは受け継がれている――。無差別級で争われる柔道の全日本選手権(29日、日本武道館)、五輪2大会金メダルの故斉藤仁さん(享年54)の次男・斉藤立(20=国士舘大)が、昨年の世界選手権覇者・影浦心(26=日本中央競馬会)を延長戦の末に下して初優勝。20歳1か月での優勝は、大会史上3位の年少記録となった。また、父も1988年大会を制しており、史上初の父子Vを成し遂げた。
亡き父がかつて躍動した聖地・日本武道館で息子が新たな歴史を刻んだ。史上初の父子Vに期待が集まる中、順調に白星を重ねた。東京五輪代表・原沢久喜(29=長府工産)との準決勝は、延長の末に勝利。影浦との決勝も延長までもつれたが、14分過ぎに足車で技ありを奪って勝負あり。「うれしかったけど、こんなところで終わっていられない。自分の柔道ができたから勝てた。でもやっぱり20歳なので次がある。慢心とか手を抜くことはできない」と振り返った。
最後は気持ちで戦い抜いた。父・仁さんが1988年大会で優勝した際の映像は、仁さんの死後に初めて見た。「執念という言葉が表れているような試合だった。自分もこういう選手にならないといけない」と憧れを抱いたことは今でも覚えている。
父の背中から感じた思いを、この日は自身が体現した。「負けた時に自分の関係者、親族、いろんな人が悲しむ姿を見たくなかった。死んでも勝ってやろうと思った」。4度目の延長となった決勝は、体力が限界を超えていた。「俺は絶対に負けへん」。心に秘めた思いが、土壇場で体を突き動かした。試合後には、母・三恵子さん、兄・一郎さんと歓喜の抱擁を交わし、感謝の思いを伝えた。
ついに父と同じ場所に上り詰めた。ただ、満足はしていない。天国の父は「握手してから、課題の部分を言われると思う。自分の前ではすごい厳しいので、褒められることはないと思う」と厳しめの評価を下すと予想。自身も「自分はまだまだ全盛期じゃない。これからの選手なので、パリ五輪にしっかりピークを持っていきたい」とさらなる高みを見据えている。
喜びに浸りたいところでも、あえて冷静な表情を崩さないのは〝五輪金メダル〟を視野に入れているからこそ。今回のタイトルを機に、王者への道を歩み出す。
東スポWebより転用
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