ロシアに追加制裁、政府は苦慮…サハリン撤退せず・エネルギー分野で圧力の可能性も
- 国際
- 2022年4月6日
ウクライナの首都近郊で多数の民間人の遺体が見つかったことを受け、欧米諸国がロシアへの制裁強化を検討する中、日本政府は追加制裁に向けた判断に苦慮している。これまで同様、先進7か国(G7)と共同歩調を取る構えだが、日本経済に影響が大きいエネルギー分野は避けたい考えだ。
松野官房長官は5日の記者会見で、「民間人の殺害は国際人道法違反であり、断じて許されない。(追加制裁は)G7を含む国際社会と連携して適切に対応する」と強調した。
ロシアのウクライナ侵攻以来、日本はG7などと協調し、プーチン大統領を含む101の個人、ロシアの主要7金融機関を含む19団体を資産凍結の対象とする金融制裁を発動。貿易面でも、他国と同じ関税を保障する「最恵国待遇」を撤回するため、制度改正を進めている。
追加制裁で焦点になるのがエネルギー分野だ。
エネルギー自給率の高い米英はロシア産原油などの禁輸を決めたが、ロシアへの依存度が高いドイツなどは禁輸を見合わせてきた。日本も天然ガス9%、原油4%をロシアに依存しており、政府は極東ロシア・サハリンの資源開発事業などから撤退しない方針を表明。首相周辺は「禁輸は中国が権益を奪うだけで、得策ではない」と語る。
ただ、今回の民間人殺害は戦争犯罪の疑いが強まっており、国際社会では、より厳しい対露制裁が不可欠との認識が広がっている。独仏などがエネルギー分野の制裁に踏み切れば、日本への圧力が高まることも想定される。
政府は追加制裁として、現行の金融制裁を拡充し、ロシアの最大手銀行ズベルバンクを資産凍結の対象に加えることなどを検討している。農産物の禁輸などの案も浮上している。
政府内では「各国とも手探りで制裁を検討している。G7としてどう打ち出せるか、現時点では見通せない」(外務省幹部)との声も漏れる。
ウクライナ避難民とともに帰国した林外相は、7日にはベルギーのブリュッセルで開かれるG7外相会合、北大西洋条約機構(NATO)外相理事会への出席を予定しており、制裁を巡る他国の動向を見極めたい考えだ。
■与野党が非難 茂木氏「戦争犯罪者」
ウクライナで多数の民間人の遺体が見つかったことを受け、与野党からは5日、ロシアに対する厳しい非難の声が相次いだ。
自民党の茂木幹事長は記者会見で、民間人の殺害は国際人道法に違反すると指摘した上で、プーチン大統領らを念頭に「定義にもよるが、戦争犯罪者と呼んでもいい」と述べた。
高市政調会長も党会合で、「今回の行為を見逃していては『第2のロシア』が出てくる。毅然(きぜん)と対応していかないといけない」と強調。公明党の山口代表も記者会見で、「戦争犯罪というべきものだ」と語った。
立憲民主党の西村幹事長も記者会見で、「プーチン氏を始めとするロシアの国際法上の責任を明確にすべきだ」と主張。国民民主党の玉木代表は「ジェノサイド(集団殺害)と言っていい状況だ。ロシア、プーチン氏に報いを受けさせなければならない」と述べた。
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