チェルノブイリ原発で電力遮断、核燃料の冷却に支障…大気中に放射性物質漏れる恐れ
- 国際
- 2022年3月10日
【ベルリン=中西賢司】ロイター通信などによると、ウクライナ北部のチェルノブイリ原子力発電所で9日、電力供給が遮断され、使用済み核燃料の冷却に支障が出ている。国営原子力企業エネルゴアトムは、放射性物質が漏れる恐れもあるとして警戒を強めている。
原発は2月下旬、ウクライナに侵攻したロシア軍に占拠された。ロシア軍とウクライナ軍の戦闘が続いており、電力の復旧作業ができない状況だという。電力供給が止まった原因など詳細は不明だ。
チェルノブイリ原発では1986年4月、原子炉が爆発し史上最悪の放射能汚染を引き起こした。
事故が起きた4号機は内部に核燃料を残したまま建屋をコンクリートで固め、現在は全体が鋼鉄製のカバーで覆われている。1~3号機も事故後、運転を停止した。
一方、国際原子力機関(IAEA)は8日、チェルノブイリ原発の核物質の監視システムからのデータ送信が途絶えたと発表した。原発とウクライナ当局とのやり取りは、電子メールだけになっているという。
原発のスタッフ200人以上は2週間近く原発施設内に閉じ込められたまま、ロシア軍の監視のもとで働き続けている。
チェルノブイリ原発構内では、使用済み核燃料の冷却が続いている。宮野広・元法政大客員教授(原子炉システム学)は「使用済み核燃料は当然、冷却し続ける必要があるが、チェルノブイリは廃炉してから数十年たっており、発熱量も下がっている。停電し、冷却機能が下がったとしても、すぐに大事故につながるわけではない」と話している。
チェルノブイリ原発では、約2万本の使用済み核燃料が敷地内の貯蔵施設に保管されている。燃料は熱を発しているため、ウクライナの規制当局は空気を循環させるなどして冷やしている。
東京工業大学の二ノ方寿名誉教授(原子炉工学)は「燃料は数十年たっているので、発熱量が相当少ないとみられる。核燃料の本数にもよるが、仮に電力供給がなくなっても大事故には至らないだろう」と話している。
読売新聞より転用
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