政治献金「ない袖は振れない」、コロナで大幅減…飲食業界「ゼロ」も
- 政治・経済
- 2021年12月27日
新型コロナウイルスの感染拡大で、企業・団体が政治献金を減らす動きが相次いでいる。11月に公開された昨年の政治資金収支報告書では、緊急事態宣言の発令などで大きな打撃を受けた運輸や飲食といった業界でコロナ禍前からの大幅ダウンが目立ち、中にはゼロにした企業もあった。「第6波が来ても雇用や消費活動が維持されるよう、政治に期待したい」。厳しい経営の中でも献金を続ける企業からは切実な声も漏れる。
自民党の政治資金団体「国民政治協会(国政協)」が昨年に受領した献金は前年比3%減の約27億9000万円。179の企業・団体が減額・中止し、うち2割は100万円以上減らしていた。
コロナ禍で旅客数が激減した航空業界からの献金は、ANAホールディングス(東京)が前年の1100万円から7割減の300万円。広報担当者は「収入が大幅に落ち込んでおり、減額はやむを得ない」と話した。日本航空(同)も2割減の800万円だった。
観光低迷に苦しむバス業界。日本バス協会の政治団体「バス交通懇話会」の国政協への献金は前年と同じ20万円だった一方、国会議員の政治資金パーティー券の購入額を360万円から3分の1程度に減らした。「ない袖は振れない」。関係者は、政界との「距離感」に悩む胸中を明かした。
飲食業界では、アサヒビール(東京)が前年比200万円減の366万円だった。ファミリーレストランを展開するジョイフル(大分)は「コロナの影響で売上高が著しく減少した」として、国政協に例年行っていた100万円の献金を中止。同じく献金をゼロにしたある和食チェーンの担当者は「雇用を守るため、経費削減を進めた結果」と話した。
一方、国政協に対する献金を前年から増額させた企業もある。例年の7倍近い2000万円を献金したのは、牛丼店「すき家」などを展開する外食大手ゼンショーホールディングス(東京)。商品の持ち帰り需要が伸びたものの、時短営業などの影響でグループ全体では減収減益だった。広報担当者は「コロナ禍で不安定な中、雇用確保などへの期待を込め、支援を手厚くした」と強調した。
与野党の国会議員が代表を務めるなどしている政治団体への献金も大幅に減少した。総務省が所管する国会議員関係政治団体への企業献金は計2億600万円で、前年から半減した。政治資金パーティーなどの事業収入も3割減の50億1200万円だった。
ある野党議員が代表を務める政党支部では、企業献金が前年から8割近くダウンした。担当者は「コロナ禍で経営が大変な状況だと考え、献金依頼を見送らざるを得なかった」と語る。
谷口将紀・東大教授(現代日本政治論)は「日本では、企業献金は政治家との関係維持のために毎年同額が支払われる傾向があり、減額や中止は企業側の苦しさの表れだ。今後、不況が長期化すれば、定額を献金する傾向が流動化し、献金そのものが先細りしていく可能性もある」と指摘している。
読売新聞より転用
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