43歳福留が柳や根尾らを導く…「チームの打撃練習で打球追え」「ベンチでは監督の近くに」志ある野球人が通るべき道
- スポーツ
- 2021年4月20日
◇渋谷真コラム・龍の背に乗って ◇17日 中日5―0広島(バンテリンドームナゴヤ)
43歳の福留が試合を動かし、20歳の根尾が大きな追加点を挙げ、26歳の柳が三振の山を築いた。3人には共通点がある。なぜか4月生まれ。鹿児島、飛騨、そして宮崎。15歳で故郷を離れ、それぞれが「日本一」と思う高校に飛び込んだ。ここでは書けないような壮絶な話も聞いたことがあるが、彼らを支えたのは未来を見据えた「志」だった。
柳はともかく、根尾とは「親子」ほど年齢は離れている。グラウンドに立てばキャリアは関係ないが、そこに立つまではよき兄貴であり、ときに父。開幕直前に打ち込まれた柳がプレートの踏み位置を変えようか悩んでいたとき、打者としての意見を仰いだのが福留だった。大ベテランに変化を後押しされたところから始まった復調と快進撃。この日は待ち望んだ1点と勇気を贈られた。
根尾には同じ遊撃手から外野へ挑んだ先輩の経験を授けている。開幕3戦目(3月28日)、根尾は平凡な飛球を落とした。マツダ特有の風の動きを把握しておらず、わずかな打球の動きにグラブが追いつかなかったからだ。「チームの打撃練習で、ひたすら打球を追って捕るんだ。コーチのノックよりも大切なことだぞ」。生きた打球の動き、伸びを繰り返し学ぶ。あの凡ミスから、根尾が外野で球を追う時間は明らかに増えた。
根尾を含む若手たちには、ベンチで座る位置も変えるよう促した。1軍の経験が浅い彼らは、遠慮して首脳陣から遠い場所に座っていた。「そうじゃないよ。監督の近くに座るんだ。そこで監督が何を話すのか、耳をそばだてて聞いてごらん。どんなプレーをしてほしいのかが分かるから」。大将が目指す野球を知ることの大切さは、福留が知っている。若いころ、星野監督の前に座っていたからだ。
闘将はミスがあればベンチを蹴る。「僕、本当に体が浮き上がったことがありますから」。怖かったが、平気なふりをして星野好みの選手になった。時代は動き、気質は変わる。だが、野球人が通るべき道に43歳も20歳もないはずだ。
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