「同胞殺せない」 デモ弾圧嫌いインドへ逃亡、ミャンマー兵士や警察官
- 国際
- 2021年3月27日
【AFP=時事】Tシャツ姿のミャンマー兵(24)は震えながら、自分の地元の住民に対して暴力を行使するよう命じられたことを振り返った。その命令こそがインドへ逃亡するきっかけとなった。
身の安全を守るため、この兵士をチョーさんという仮名で呼ぶ。チョーさんは、AFPが面会したインド北東部ミゾラム(Mizoram)州のある場所に身を潜める40人のミャンマー人の一人だ。彼らのほとんどは警官だった。
人権監視団体「ビルマ政治囚支援協会(Assistance Association for Political Prisoners)」によると、ミャンマーで2月1日に起きたクーデター以降、軍事政権による抗議デモへの弾圧で少なくとも180人が死亡している。
暴力が続く中、300人以上のミャンマー人がミゾラム州へ入ったと、越境を支援する地元民が15日、AFPに語った。越境者の多くは警官とその家族で、軍人も2人いた。
ライフル銃兵のチョーさんは、入隊後4年ほどになる。クリスチャンが多数を占める少数民族のチンで、2人の子どもがいる。
自らと同じチン人に致命的な暴力を与え、彼らについて密告するよう命じられたとチョーさんはAFPに明かした。「軍は罪の無い人たちを殺せと命令しています。私の母親や父親のような人たちを」
「なぜ自分と同じ人たちを殺さなければならないのでしょうか」
チョーさんはバイクと徒歩で4日かけて、辺境の山岳地帯ミゾラムに着いた。家に電話をすると、実家が捜索され父親が逮捕されていた。
もう一人のライフル銃兵(21)も家族の安全を心配している。「デモ隊めがけて仲間が発砲し、自分も撃てと言われました…でも自分と同じ人たちを殺すことはできません。だから、夜中に逃げ出しました」
■インドへの長い道のり
ミャンマー西部の国境沿いに約10日間歩いて、ミゾラム州にたどり着くこともできる。同情的な地元民に助けられ、親族の家に連れていかれることもあれば、当局からかくまってくれる人に託される場合もある。
だが、この地方で展開するインドの準軍事組織「アッサム・ライフル部隊(Assam Rifles)は先週、8人のミャンマー人が「追い返された」と発表した。
AFPが会った越境者らは、移動が厳しいので、家族を残して逃亡したと明かした。着の身着のまま、持てる物だけを持って到着し、あとは食べ物や毛布、現金を持ち寄ってくれる地元民に頼った。
彼らは建設中の建物の床に敷かれたマットレスやマットの上に座っていた。一人はビルマ語の聖書を携えていた。
■射撃命令
逃亡したある警官(24)は、彼女自身の体験を語り、泣き崩れた。
兵士らにデモ参加者を撃てと命令が下り、警備強化のために警官が配備された。「警察だとはいえ、私たちもあの人たちと変わらぬ市民です。そんな命令など聞きたくもなかった。撃つ気になんてなれなかった」
警官が民間人を射撃するところは目撃していないが、チン州の高地にある小さな町でデモの指導者らが逮捕されるのを見たと証言する。
彼女はミャンマー全土で数万人の公務員が加わっている市民的不服従運動に参加したという。「民主主義を取り返したいのです」
「国際社会に私たちの国を助けてほしい。自分は階級が低いので大した力がない…だから参加しました」。家族の唯一の稼ぎ手だったので、暮らしを心配している。
チョーさんに加え、彼女ともう一人の警官は、軍や警察の身分証明カードを見せてくれた。AFPは彼らの証言内容を独自に確認できなかった。
開け放った窓から日が差し込む中、黙って座っていた彼らは右手を上げて3本指を立てた。米映画『ハンガー・ゲーム(The Hunger Games)』で抵抗のサインとして描かれたジェスチャーで、ミャンマーの抗議デモ参加者の間で広まっている。
「ミャンマーには戻りたくない」とチョーさんは言う。まだ震えが止まっていない。「自分は兵士なので、戻ったら身の安全はない」
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