ふるさと流出額全国2位、名古屋が「返礼品競争」に参戦
- 政治・経済
- 2021年2月15日
ふるさと納税の「返礼品競争」に、名古屋市が本格的に参戦することを決め、2021年度当初予算案に関連経費1億円を盛り込んだ。新型コロナウイルスの影響で減った市税収入を補うとともに、苦境に陥っている市内の事業者への支援も図る狙いがある。
市は現在、33種類の寄付金メニューを用意している。内容は、犬や猫の殺処分ゼロを目標とするものや、子どもの貧困対策に充てるものなどで、市の政策の趣旨に賛同してくれる人に寄付を求め、見返りとなる「返礼品」がないものが中心だ。返礼品があるのは、名古屋城天守閣の木造復元への寄付に対し、年間無料入場券がプレゼントされるなど、一部にとどまっている。
だが、全国的に過熱している返礼品競争により、名古屋市に本来入るはずの税金の「流出」は続く。14年度に約9000万円だった流出額は、19年度は約81億4000万円と約90倍にまで増え、20年度は約85億9200万円と見込まれる。この10年に市内で整備された小中学校は1校約25億円で、流出分で年に3校が建つ計算だ。全国的にみても、横浜市の約144億6600万円に続く規模で、市は対策に迫られていた。
さらに新型コロナの影響で、営業時間の短縮や外出自粛の影響から、市内の事業者は苦境に陥っており、その支援策も求められる。このため、返礼品拡充を進めることにした。市資金課は「流出額の大きさも念頭にあるが、新型コロナで苦しむ事業者を支援したいと考えた」と説明している。
返礼品の内容は、総務省の基準を念頭に、市内で生産された物品を想定。募集前のため、「名古屋の地場産業がこれだということは示せない」(担当者)としているが、みそ煮込みうどんや台湾ラーメンなどの「名古屋めし」や、有松絞などの伝統産業などが想定されている。
市は議決後に返礼を募集し、21年度の下期に寄付募集を開始する予定。担当者は「80億円もの流出額を一気に取り戻すのは困難なので、まずは2億円を目標にしたい」としている。
公債償還基金から70億円借り入れ
名古屋市が「ふるさと納税」による税収の流出に危機感を持った背景には、厳しい台所事情もある。
市の21年度一般会計当初予算案は、過去最大の約1兆3194億円となったが、歳入の柱となる市税収入は新型コロナによる景気悪化もあって、前年度比6・5%減約388億円と過去最大の減収となった。
その穴埋めとして、市債を前年度比57・6%増の約1291億円発行するほか、市債償還のために積み立てている「公債償還基金」から17年ぶりに70億円を借り入れるなどして対応した。
鈴木峰生財政局長は「緊急避難的な措置だ。公債償還基金については、新型コロナがなければ、(借り入れせずとも)予算を組むことができた」と説明している。
読売新聞より転用
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