プロ野球キャンプ「臨時コーチ」は“いいとこ取り” 今年は元大物が4人も【権藤博の「奔放主義」】
- スポーツ
- 2021年2月13日
プロ野球のキャンプ報道を見ていると、「臨時コーチ」の文字がやたらと目につく。今年は特にそうだ。ヤクルトに“ID野球の申し子”古田敦也、阪神に“バントの神様”川相昌弘、中日に“ミスタードラゴンズ”立浪和義、ロッテには“平成唯一の三冠王”松中信彦が参加。球史にその名を残す大物が熱心に選手を指導するさまは、メディアにとって格好のネタになるからだろう。
彼らの経験、技術が選手に還元されればいいと思うが、既存のコーチは複雑ではないか。プロ野球選手はシーズンでの成績がすべてで、キャンプはその準備段階に過ぎない。投手はブルペンで気持ちよく腕を振り、打者はフリー打撃で気持ちよく打球を飛ばす。なんのプレッシャーもかからない今の段階で正直、コーチの出番はない。
サバイバル競争となる実戦に入り、相手投手や打者と対峙したときに、いかにして練習通りの力を発揮させてやるか。コーチの仕事はそこに集約されるが、臨時コーチはその最も大事なことには関わらない。アドバイスをして一時的にでも選手の調子が上向けば、臨時コーチのおかげ。シーズンで結果が出なくても、責任を追及されることはない。結果によってユニホームを脱がされる既存コーチにしてみれば、本音は「臨時コーチはいいとこ取り」だろう。
■もし私が頼まれたら…
そもそも、キャンプの1カ月間だけで教えられることは限られる。事前に指導に関するコンセンサスを取っても、言い方ひとつで選手の受け止め方は違う。混乱のもとになりかねないリスクもはらむ。
もし、私が臨時コーチを頼まれたら、選手への直接的なアドバイスは控え、「コーチのお話し相手でいいならやりますよ」ということになる。私の経験をコーチに伝える役目なら、いらぬ混乱も招かないだろうし、少しは役に立てそうだ。
古田も川相、立浪、松中も短期間の臨時コーチでお茶を濁すにはもったいない人材だ。球団なり監督なりがその指導力を認めるなら、臨時などとケチなことを言わずに、正式なコーチとして招聘すればいい。巨人は桑田真澄を、ソフトバンクは小久保裕紀をそれぞれ入閣させた。古田、川相、立浪、松中が彼らと同じ立場でグラウンドに立つ姿を私は見たい。
(権藤博/野球評論家)
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