「処理水」の処分方法 年内の決定を断念 政府
- 政治・経済
- 2020年12月25日
東京電力福島第1原発のタンクにたまり続ける汚染処理水について、政府は24日、年内に処分方法を決定するのは厳しいとの見通しを明らかにした。当初は10月末に決定する方針だったが、漁業関係者らから反発を受け先送りしていた。
政府関係者によると、10月末以降も、海洋放出をした場合の風評被害の対策などを検討し、関係団体などと調整を続けている。しかし、決断できる段階には至っていないという。
さらに、経済産業省と東電はこれまで、汚染処理水をためるタンクの容量が満水になる時期を「22年夏」としていた。しかし、汚染処理水の増加量がこれまでの想定より減っていることなどから、政府はこの日、満水の見通しを「22年秋以降」と修正。これにより、処分方法の決定の時期は当初より余裕が生じることになった。
一方、東電は24日、福島第1原発で増え続ける汚染処理水のうち、国の放出基準を超える放射性物質が残る水を多核種除去設備「ALPS(アルプス)」を使って濃度を下げる再処理試験の結果を発表した。技術的に取り除けないトリチウム以外では、ゼロにはできなかったが国の基準を下回るまで濃度が下がった。
敷地内にたまり続けている汚染処理水には、トリチウム以外にも63種類の放射性物質が含まれ、11月の時点で容量は123万立方メートル余り(東京ドーム1個分に相当)に上る。うち、約7割は放射性物質の濃度が国の放出基準を超えている。アルプスのトラブルが続いたり、稼働率の向上を優先してフィルターの交換頻度を減らしたりしたためだ。
こうした状況を受け、海や大気中に放出するには、国の基準を下回るまでアルプスを使って濃度を下げなければならなくなった。東電は9月からアルプスによる再処理試験をして、濃度を検査していた。
その結果、ストロンチウム90など汚染処理水に含まれる放射性物質の中で大半を占める7種類の合計では、濃度が基準の2165倍だったが、6分の1以下に下がった。63種類全体で見ても、濃度が基準の約2400倍だったが3分の1近くになった。
セシウム134など51種類は、測定器で検出できる限界未満にまで取り除けた。ただ、ヨウ素129は国の基準を下回り26分の1程度にまで濃度が下がったものの、検出できる限界まで下がらなかった。【荒木涼子、塚本恒】
毎日新聞より転用
コメントする