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「エール」志村けんさん 初出し映像で再登場「奇跡」偶然のオフショットで最後に笑顔 ネット涙


今年3月29日に新型コロナウイルスによる肺炎のため亡くなったコメディアンの志村けんさん(享年70)が26日に放送されたNHK連続テレビ小説「エール」(月〜土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)の実質最終回となる第119話に未公開の初出し映像で再登場した。共演者のNGに思わず笑った鏡越しのオフショットが偶然、撮れていた。主人公・古山裕一の壁となる“ヒール役”小山田耕三を熱演したため、いつもしかめ面だった志村さんが最後の最後に柔和な笑顔を披露した。当初は第79話(10月1日)が最後の出演だったが、偶然が重なり、回想シーンではない映像による再登場が実現。チーフ演出の吉田照幸監督(50)は「奇跡」と舞台裏を語った。ドラマは明日27日、異例のコンサートで最終回(第120話)を迎える。

志村さん再登場と本編の夫婦愛の完結に、SNS上には涙する視聴者が続出。「小山田先生、また会えましたね。涙が流れてしまいました。最後の笑顔も素敵でした。最後に志村けんさん出演シーンをつなげて放送。しかも天国からの手紙。泣かせる」「ともにコロナ禍を生きる戦友みたいなドラマだった。物語上の話のみならず、視聴者としても毎日エールを送られた気分になっていた。明日のフィナーレも楽しみだな」「小山田先生(志村けんさん)からのラストメッセージに感動。最後は豊橋の海で古山夫妻が愛し合い、お互いに感謝の言葉。そして窪田正孝さんから視聴者へのメッセージと明日の告知。お見事な最終回。古山夫妻は永遠なり」などの書き込みが相次いだ。

俳優の窪田正孝(32)が主演を務める朝ドラ通算102作目。男性主演は2014年後期「マッサン」の玉山鉄二(40)以来、約6年ぶり。モデルは全国高等学校野球選手権大会の歌「栄冠は君に輝く」などで知られ、昭和の音楽史を代表する作曲家・古関裕而(こせき・ゆうじ)氏(1909―1989)と、妻で歌手としても活躍した金子(きんこ)氏。昭和という激動の時代を舞台に、人々の心に寄り添う曲の数々を生み出した作曲家・古山裕一(窪田)と妻・音(二階堂)の夫婦愛を描いた。

志村さんは朝ドラはもちろん、最初で最後のドラマ出演。裕一が幼き頃から憧れ続けた日本作曲界の重鎮・小山田を演じた。初登場の第25話(5月1日)から第79話まで10回登場。いずれも出番や台詞は多くないものの、その佇まいや眼力で圧倒的な存在感を示し、反響を呼び続けた。

小山田は裕一をコロンブスレコードに紹介。しかし、いざ裕一が「最高傑作かもしれない」と交響曲「反逆の詩」の譜面を持っていくと「で?」と目もくれず。“塩対応”を連発し、その真意が注目されていた。

裕一(窪田)は1964年(昭39)東京オリンピックの入場行進曲「オリンピック・マーチ」を完成。音(二階堂)と開会式を見守った。東京五輪以降も、裕一は池田(北村有起哉)とのコンビで数々の舞台音楽を手掛けたが、10年後、盟友が突然倒れ、天国に旅立つ。情熱を失った裕一は、第一線から退いていった。池田の死後から5年、音が乳がんを患い、裕一は最愛の妻の療養ため、東京を離れて静かな生活を送っていた。第119話は、ある日、作曲家を目指しているという広松寛治(松本大輝)という青年が裕一を訪ねてくる…という展開。

<※以下、ネタバレ有>

広松は「私は古山先生を小山田先生から続く日本の音楽の正当な後継者だと認識しています。日本の音楽を豊かにするには、今こそ先生の力が…」と裕一に語る。

裕一には13年前の記憶がよみがえる。

小山田耕三(志村さん)が亡くなる直前に裕一に宛てて書いた手紙を、秘書・猿橋(川島潤哉)が持って古山家を訪れる。

猿橋「亡くなられる3日前に書かれた手紙です。(小山田)先生は出すべきかどうか、迷われていました。今日(手紙を)持ってきたのは、私の判断です」

裕一「読ませていただきます」

小山田の手紙(裕一の声)「久しぶりだね。活躍、いつも拝見していました。映画も舞台もよく観に行きました。君の音楽に触れるにつれ、ようやく私は分かったことがある。私は音楽を愛していた。君は音楽から愛されていた。今思えば、それが悔しくて恐ろしくて、君を庶民の音楽に向かわせたのだろう。愚かだった。もし、あの時、嫉妬を乗り越え、応援していたら、君はクラシックの世界で才能を開花させていたはずだ。私は己のエゴのために、君という才能とともに愛する音楽を冒涜してしまったのだ。後悔の念はずっと付きまとい、私の心を蝕んだ。君がオリンピックの入場行進曲を書くと聞いた時、私は心の底からうれしかった。死ぬ間際で君の『オリンピック・マーチ』を聴いた。日本国民は誇らしく思っただろう。音楽の深淵を知る曲だ。期待に応えた君に、国民を代表して最大の賛辞を送りたい。ありがとう。最後に気が引けるが、どうか私を許してほしい。音楽を愛するがゆえの過ちだ。道は違えど、音楽を通して日本に勇気と希望を与えてきた同志として、今度は語り合いたい。私は先に逝く。こちらに来たら、声を掛けてくれ。小山田耕三」

猿橋「晩年は古山先生の歌をよく聴かれていました。和声の工夫やメロディーの独創性を、他の流行作曲家とは一味違うと、うれしそうに語っていらっしゃいました。どうか、先生をお許しください(頭を下げる)」

裕一「小山田先生の本(「作曲入門」)で、私は音楽を勉強してきました。感謝しかありません。天国でお話できるのが楽しみです(頭を下げる)」

猿橋「ありがとうございます。いつも(古山)先生の前ではしかめ面でしたが、笑顔は子どもみたいにチャーミングです(鏡に映る笑顔の志村さんの映像がインサート)」

裕一「音楽の話を一晩中語り尽くします。本当にありがとうございました(頭を下げる)」

猿橋「ありがとうございました(頭を下げる)」

第6弾まで制作・放送されたNHKのコント番組「となりのシムラ」や「志村けん in 探偵佐平 60歳」で志村さんとタッグを組み、最終週の脚本も手掛けた吉田監督は「志村さんに最後、どのように登場していただくか。早い段階から手紙の構想はありました」と告白。

撮影の様子については「窪田さん、秘書役の川島さん、スタッフもみんな、小山田というよりは志村さんのことを意識して現場に臨んでいたと思います。志村さんが天国から見守ってくださっているんじゃないか、と。シーン自体は厳粛な空気に包まれていました。(撮影したばかりの映像をチェックする)プレビューは涙で見られなかったです。何を撮っているのか、よく分からないまま終わりました」と振り返った。

手紙を読む窪田の声は別撮りにせず、その場で収録。「思いの外、フラットといいますか、取り立てて感情を込めず、冷静に読まれていて。悲しいシーンなのに、どこか力強さがあるのは、窪田さんが変に感傷的になって泣いたりしていないからじゃないでしょうか。そこは素晴らしい役者さんだと、あらためて心の底から思います。スタッフ一同の志村さんへの思いも表現してくれたんじゃないかな、と。川島さんも抑えた、重みのある素晴らしい芝居だったと思います」と絶賛した。

猿橋の「いつも(古山)先生の前ではしかめ面でしたが、笑顔は子どもみたいにチャーミングです」という直後に、志村さんの笑顔の映像。これは志村さんが生前の撮影時、共演者がNGを出した時に思わず笑った顔が鏡に映ったのが偶然、撮れていた。

「ミラーショットだと思いを巡らすことができるので使いましたが、そうじゃない直接的なNGシーンなら無理だったと思います。数台のカメラで撮っていて、本当に偶然、映った画(絵)。だから画角も中途半端。狙ったカットだったら、根底からダメな画ですよね(笑)。もちろん猿橋の台詞の後に志村さんの笑顔が入るということは台本にはなく、編集マンがこの映像を見つけて入れてくれていたんです。普段の志村さんは、ああいう子どもみたいな笑顔をするので、それが映像として残っていたのは本当にうれしく思いました」と経緯を明かした。

裕一への小山田の“塩対応”は嫉妬によるものだった。「嫉妬はパワーになることもありますが、人間の心を蝕むこともあります。プライドの功罪がテーマ。志村さんは嫉妬がないような人に見えますが、実は他の人がウケていたら悔しいし、自分はならこんな笑いができるとチャレンジされる人。それも。他の人のウケ方に寄るんじゃなく、自分のテリトリーの中で勝るものはないかと努力され、勝負されていたのが凄い。そういうことも含めて、本当は小山田が裕一に会いに行って、手紙の内容を伝えるシーンで締めくくる構想が最初からありました。志村さんの柔らかい笑顔で終わりたかったので、猿橋の『いつも(古山)先生の前ではしかめ面でしたが、笑顔は子どもみたいにチャーミングです』という台詞にしたんですが、まさか映像で表現できるなんて。一瞬、写真を使おうと考えたんですが、やっぱり映像とは違いますよね。思いが詰まった作品には、奇跡が起こるんだと思いました」としみじみ語った。

スポニチアネックスより転用スポニチアネックス


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