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コロナ不況で地銀に存在感 リスク覚悟の緊急融資、構造不況に苦しんできた事情も


新型コロナウイルス感染拡大の猛威が直撃する地元中小企業の資金繰りを支えるべく、地銀を中心にした地域金融機関の緊急融資が活発だ。中小企業の経営危機に歯止めがかからない現状に、地銀各行は「いまこそ存在感を示すときだ」と鼻息が荒い。ただ、不良債権化や企業倒産に備える信用コスト上昇の懸念もある。リスク承知で動かざるを得ないことの背景には、構造不況に苦しんできた地銀側の事情もある。(岡本祐大)

■顧客と接点増やす好機

「地元企業をしっかりと支援していただきたい」。3月中旬、各地銀トップの電話に金融庁幹部からこうした要請が相次いだ。同6日には麻生太郎財務相が民間金融機関に対し、中小企業の資金繰りに対応するよう要望したばかり。中小企業の経営難が問題化し始めた時期だけに、電話を受けたある地銀トップは金融庁の焦りを感じたという。

ただ、別の地銀トップは「責任を取らない金融庁は関係ない」と突き放す。すでに多くの地銀が、政府の要請に先駆けて地元企業の資金繰りを支援する融資を拡大しているからだ。

取引先に飲食や宿泊など多くの観光関連企業を抱える京都銀行は、2月上旬には特別融資制度の受け付けを開始。4月上旬までに約600件の融資を実施し、返済期限の見直しにも対応する。同様の融資は横浜銀行や千葉銀行、池田泉州銀行など全国の地銀が手掛ける。

この状況は「これまで資金需要がなかった顧客との接点を増やす好機」(地銀関係者)でもある。関西みらい銀行は顧客対応をスピードアップするため、各部門を横断する特別チームを設置。販売減に苦しむ企業にビジネスマッチングなども提案する。担当する沢村真人執行役員は「困りごとを抱えた顧客に『役に立つ地銀』と感じてもらうことが重要だ」と強調する。

■問われる目利き力

訪日外国人客の減少や外出控えなどにより、地域経済を支える中小企業の資金繰りは急速に悪化している。神戸市の飲食業者は「いつまでこの状況が続くのか。リーマン・ショックどころか、これまでに経験がないほど落ち込んでいる」と嘆く。東京商工リサーチのまとめでは、すでに全国で50件以上の企業が倒産に追い込まれた。

それだけに地銀の融資は事業継続の大きさな支えになっている。ただ、感染終息の出口が見えない状況で、地銀にとっては緊急融資が不良債権化のリスクをはらむ。地銀関係者は「融資を断らないといけないケースは当然ある。銀行の目利き力が問われる状況だ」と話す。

また、全国地方銀行協会の笹島律夫会長(常陽銀行頭取)は3月18日の会見で信用コスト増加を指摘。大阪銀行協会の鵜川淳会長(池田泉州銀行頭取)も「信用コストを一定程度予想しながら資金を確保する必要がある」と警戒する。

■「動かぬ訳にいかない」

地銀や信金など地域金融機関は長く構造不況にあえいできた。少子高齢化や東京一極集中で地域経済は低迷。日銀のマイナス金利政策によって預貸金で収益を上げるビジネスモデルの見直しを余儀なくされた。地域での存在感が陰り、再編圧力も強まる一方だ。

それだけに、にわかに資金需要が生まれたこの現状は、顧客ニーズに応える絶好機となる。ある信金幹部は「不良債権などのリスクはあっても、お客さんのために地元信金が動かないわけにはいかない」と打ち明ける。

融資に前のめりになりかねない状況だが、アナリストは「アクセルとブレーキのバランス」を懸念する。営業担当が積極的になり過ぎて、ブレーキ役を担う審査部門のチェックが甘くなるという不安だ。

一方、政府は事業者の資金繰りのため、日本政策金融公庫など政府系金融機関を通じて無利子無担保の融資を実施。生命保険各社も積極的な契約者貸し付けを進める。官民を挙げて、中小企業支援は分厚くなりつつある。

「地銀としては当面アクセルを踏むしかないのではないか」。日銀幹部はこう冷静に分析してみせた。地域経済のためにリスクを覚悟でどこまで融資を続けるか。地域金融機関は難しい判断を迫られている。

産経新聞

 

 

一言コメント
この非常時、焦付きが増えるのはやむを得ない。


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