母子3人殺害 身内の犯行で福岡県警は“捜査より取材妨害”
福岡県小郡市で起きた母子3人殺害事件の被害者、中田由紀子さん(38)の伯父は怒っていた。その矛先は、夫で福岡県警巡査部長の中田充容疑者(38)よりもまず、福岡県警という組織に向いていた。
「警察はとにかく事件のことを隠そうとしているように思えます。ようやく葬儀(6月11日)の時に、県警の幹部2人が斎場に来て謝ったけど、『間違ったことをマスコミに言うな』と、私らはずっと言っていたんです」
伯父が憤っているのは、事件直後の報道だった。事件発生当初、県警は「無理心中」の見立てで、由紀子さんの姉が「妹が自殺している」と110番通報した、と発表した。が、実際には充容疑者が110番通報に対応する通信指令課勤務だったことを逆手に取り、携帯電話で姉から遺体を発見した旨を伝えられたことを「姉から自殺しているとの110番通報」と虚偽報告した。ところが県警は、充容疑者の逮捕後もこの発表を訂正しようとしなかった。
「由紀子の姉は遺体を発見して、携帯でダンナ(充容疑者)と話した時に『死んどうごたる』と言っただけ。『自殺した』なんて言ってない。そこでダンナは『自分が警察に連絡する』と言ったんです。なのに報道では『姉が自殺と通報した』となっていた。この間違いのせいで、姉とダンナが最初から繋がっていたのではないかとまで言われてしまった。すぐに取り消してくれと頼んだのですが、県警は『取り消せない』と拒み続けたんだから」
謝罪はしても発表は取り消さない。それほど県警は、“身内”の事件に神経質になっているということだろう。社会部記者はこう話す。
「遺体発見当初の発表では、通常は出されるはずの家主の名前や職業が出ず、後になって『警察官』と追加発表された。身内が関与している可能性を伏せておきたかったのではないか」
本誌記者も現場で、県警による手厚い“取材妨害”に遭遇した。充容疑者の自宅は、取材陣に立ち入らせないように、ブルーシートを隣のマンションにまで張って道は塞いだ上で、常に3人態勢で警備。歩道で写真を撮ろうとするだけで「危険だから立ち止まらないで!」と注意される。
お通夜の斎場でも路上で撮影するマスコミにパトカーに乗ってきた警察が「撮影はやめてください!」と割り込み、取材陣から不満の声が上がった。
「記者クラブ加盟社には県警から『遺族への取材はやめてください』とのお達しまで出た。今回は県警が情報を出さないと各社嘆いている」(前出・社会部記者)
実は犯行動機にも県警が“関与”していた可能性がある。前出の伯父が証言する。
「謝罪に来た県警が話すには、犯行前日に昇任試験の合格発表があり、不合格だったことを知ったらしい。犯行に関係があるのではないかと話していた」
福岡県警では、先に話題になった金塊強奪事件を水面下で捜査中に、西日本新聞にスッパ抜かれて面子を潰されたことがあり、情報漏洩には過剰にナーバスになっているという。
しかし今、県警が気にするべきは、まず真相解明に迫るための情報収集ではないのか。
“身内”たちの思いを知ってか知らずか、充容疑者は「飄々としていて、食事もしっかり食べ、読書をして過ごしている」(捜査関係者)という。
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