河井案里氏陣営、違法報酬か 昨年7月の参院選 複数の関係者へ 原則無報酬の選挙運動に対価の可能性
- 政治・経済
- 2020年1月15日
自民党の河井克行前法相(衆院広島3区)の妻案里氏(参院広島)が支部長を務める自民党支部が、昨年7月の参院選で複数の陣営関係者に、公選法違反(買収)の疑いがある報酬を払っていたことが14日、分かった。いずれも選挙期間中に企業回りなどで支持拡大を図っており、うち1人は「違法な報酬をもらった」と認めた。原則として無報酬の選挙運動に、案里氏の陣営が対価を広く渡していた可能性が出てきた。
昨年7月の参院選広島選挙区(改選数2)で初当選した案里氏の陣営を巡っては、選挙カーで支持を呼び掛ける車上運動員に公選法の報酬上限の2倍に当たる1日3万円を払った疑惑なども浮上している。広島地検は車上運動員に加えて、選挙運動の対価で報酬を得た疑いがあるとして、陣営関係者からも事情を聴いているもようだ。
中国新聞の取材によると、公選法違反の疑いがある報酬を得た陣営関係者は少なくとも3人で、いずれも案里氏が立候補表明した3月以降、克行氏たちに誘われて加わった。公示日の7月4日から投開票日前日の同20日までの選挙期間中、県内の企業を訪問するなどして案里氏の支持固めをしたという。関係者の証言などによると、報酬は7月分だけでも1人40万~50万円という。
公選法は選挙運動に対する報酬の支払いを、車上運動員や、選挙運動に直接関わらない事務員たちに限って認めている。金額には上限があり、選挙管理委員会に支給対象者を事前に届け出る必要がある。今回の陣営関係者の届け出はいずれもなかった。
陣営関係者の中には選挙期間中、案里氏が推薦を得た公明党との窓口役として運動の中心的な役割を果たした人もいる。この関係者は中国新聞の取材に「あくまで党勢拡大に向けた政治活動の一環。選挙運動には当たらない」と主張した。
別の男性は、克行氏から5月下旬に「選挙を手伝ってほしい」と頼まれ、月70万円の対価を約束された。選挙期間中は企業などを訪問。案里氏が支部長の自民党広島県参議院選挙区第7支部から6月28日~8月1日、計約86万円の振り込みを受け「違法な報酬だった」と認めている。
複数の陣営関係者に公選法違反(買収)の疑いがある報酬を払っていたとの指摘について、案里氏の事務所は「刑事事件の進捗(しんちょく)や捜査への支障の有無などを勘案し、適切な時期に説明したい」とコメントした。
▽「選挙運動の対価」焦点
自民党の河井案里氏が初当選した昨年7月の参院選広島選挙区で、複数の陣営関係者に対する買収疑惑が新たに浮上した。今回の疑惑は、案里氏の自民党支部が払った報酬が「選挙運動への対価」に当たるかどうかが最大の焦点になる。
公選法は選挙運動の報酬の支払いを車上運動員たち一部に限定している。今回、報酬を受け取った陣営関係者の役割は、集票のための企業回りや公明党支持層への働き掛け、有権者に投票を促す電話作戦の指示などだったという。
案里氏は、関係者が実際に担った役割を自らがどう認識し、報酬が正当なのかどうかを説明する義務がある。陣営関係者の一人は取材に「選挙運動ではない」と否定した一方で、政党支部の政治活動と選挙運動の線引きは「極めてあいまいだ」と認めている。
昨年4月にあった統一地方選の大阪市議選では当選した市議が車上運動員の手配業務をした男性に報酬を払い、公選法違反(買収)罪に問われた。9月の大阪地裁判決は懲役1年、執行猶予5年。大阪高裁も11月、一審判決を支持した。市議自らが依頼した男性の業務が「選挙運動」とみなされ、市議に罪が及んだことになる。
今回の疑惑では、支払いを指示したのが夫の克行氏だったとの証言もある。陣営関係者らは「克行氏に誘われて陣営に入った」「克行氏は選挙運動の仕切り役だった」とも語っている。捜査に着手した広島地検が克行氏の指示内容などをどう精査していくかも大きなポイントとなりそうだ。
■買収罪の可能性 広島大大学院の茂木康俊准教授(行政学・政治学)の話
公選法は選挙運動を原則無償でするよう定めており、報酬を受けた人の業務が選挙運動なのかどうかが重要になる。今回のケースは陣営関係者が担った実際の役割に加えて、雇われた時期と投開票日の近さから選挙運動と判断するのが妥当で、買収罪に問われる可能性がある。
一言コメント
そういや説明責任はいつ果たすのかな?
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