世界をリード、最新の石炭火力 九電松浦2号機20日に営業運転
- 企業・経済
- 2019年12月17日
■「脱石炭」の逆風、発電効率でCO2削減
九州電力は、燃料に石炭を使う最新鋭の松浦火力発電所2号機(長崎県松浦市、出力100万キロワット)を新設し、16日に報道関係者に公開した。20日にも営業運転を開始する予定。世界最高水準の発電効率や、排煙処理を徹底した環境性能の高さが特長。世界的な逆風が吹く中でも、石炭火力発電が生き残るあり方を示す施設といえる。(九州総局 中村雅和)
松浦2号機では現在、九電による営業運転前の自主検査が最終段階に入っている。この日は、発電タービンをフル稼働させ、石炭の燃焼状況や機械類の動きを確認していた。
松浦2号機は石炭を燃やして発生させる蒸気を高温・高圧にし、発電効率を高める超々臨界圧(USC)方式を採用している。石炭が持つ熱量の活用割合を示す発電効率は46%。平成元年6月に運転を始めた石炭火力としては世界トップクラスの高効率施設、同発電所1号機(43%)よりもさらに向上させた。この結果、同じ電力を作り出す際に使用する石炭の量を1号機と比べて5%程度削減することが可能だ。
九電は、長らく中断していた松浦2号機の工事を28年1月に再開し、急ピッチで建設を進めた。当初予定を約半年前倒しし、年内の営業運転開始にこぎつけた。
同発電所の日野雅貴副所長は「2号機は高効率で、CO2の排出量削減も期待できる。(工期短縮に)かなりの苦労はあったが、1日も早く完成させたかった」と語った。
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ただ、このような努力と裏腹に、石炭火力発電には強い逆風が吹く。一部の環境NGOは「脱石炭」の声を上げ、国際世論作りに躍起だ。こうした世論に押されてか、金融機関が石炭火力発電への新規投資を抑制する方針を打ち出すなど、影響が生じている。
「実態を無視した政治的パフォーマンスだ」
ある電力OBは、スペイン・マドリードで開かれた国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)での国際NGO、気候行動ネットワークのふるまいをこう断じる。
同団体は、温室効果ガス削減目標の引き上げや石炭火力発電中止の考えを示さなかったとして、独自基準で選ぶ「化石賞」を日本に今回の会議期間中で2度与えた。
ただ、日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット(EDMC)によると、2016年、世界のCO2排出量(323億トン)に占める日本の割合は3・5%(11・4億トン)に過ぎない。国立環境研究所のまとめでは、2014年度以降、排出量は減少が続いている。日本は同団体が評価するような実現可能性が疑わしい華々しい将来目標をぶちあげるのではなく、着実にCO2を削減する結果を出している。
また、同団体が問題視する石炭火力発電も、日本は他国に比べて効率が高い優秀なプラントをそろえる。
地球環境産業技術研究機構の分析では、1990年以降、日本の発電効率は40%程度をキープし、世界最高水準を誇っている。さらに、USC以上の高効率が見込める石炭ガス化複合発電(IGCC)や石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の開発でも世界をリードする。
一方、電源の70%を石炭火力発電に依存するインド(2017年、国際エネルギー機関まとめ)は、ここ20年で効率を悪化させ、30%を下回る。また、世界最大のCO2排出国、中国は1990年に20%台だった効率を、世界平均(34%程度)にまで改善させたが、日本と比べると、まだまだ向上の余地はあるのが実情だ。
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今後、中国やインドに続く新興国や途上国の経済発展に伴い、電力需要の拡大が予想される。それらの国々にとって、埋蔵地域に偏りがなく、価格が安い石炭は安価な電気を得る大きな選択肢だ。石炭利用を妨げることは、経済成長の否定にもつながりかねない。
政府は「インフラシステム輸出戦略」で、USCなど最新技術の導入支援をうたっている。新興国や途上国への技術移転が、世界的なCO2排出量減につながるとの考えだ。
日本の電力各社は、そうした協力を重ねてきた。九電の瓜生道明会長はかつて中国・山東省で火力発電所の効率向上に取り組んだ経験を持つ。また、電気事業連合会の試算では、各社が培ったノウハウを新興国や途上国に移転すれば2020年度で年間最大5億トン、30年度に9億トンのCO2排出が削減できる可能性があるとする。
こうした事実に目をつぶり、石炭火力発電を悪玉視するだけの単純な議論に飛びつくことは害悪でしかない。
一言コメント
小泉さんうまくアピールしてね。
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