熊本のぼったくり被害9割減 地震後急増、新条例で客引き禁止に
- 詐欺・悪徳商法
- 2019年10月27日
2016年の熊本地震以降、熊本市の繁華街で急増したぼったくり被害の相談件数が、今月21日時点で19件にとどまり、200件超だった昨年の1割以下まで激減したことが熊本県警への取材で判明した。悪質な客引き行為を巡る110番件数も昨年の半分以下で推移。全業種で客引きを禁じた市の新条例(4月施行)の効果とみられるが、チラシ配りを装って声を掛ける新たな手口も確認され、市や県警は警戒を強めている。【栗栖由喜】
県警熊本中央署によると、市中心部には地震後、復興需要を狙って県外から悪質業者が流入。「30分飲み放題1500円」などの誘い文句で客引きされた男性客が、実際には1人数万~数十万円を請求される金銭トラブルが急増した。約90万円を請求されたケースもあり、昨年3月にはぼったくりが原因の傷害致死事件も起きた。
キャバクラなど接待を伴う風俗営業とは違い、居酒屋やガールズバーの客引きは一部の悪質な行為を除き、風営法や県迷惑行為等防止条例では規制できない。このため市は新条例で、市中心繁華街に限り、業種を問わずに客引き行為や、客引き目的で路上に立つ「客待ち行為」を全面禁止。違反した店には指導や警告をし、従わない場合は5万円以下の過料を科して店名を公表するとした。
その結果、客引きを巡る110番件数は、昨年の1186件に対し、今年は459件(今月21日時点)にとどまる。客引きされて被害に遭うケースが多かったぼったくり被害の抑止効果はさらに顕著に表れ、県警への相談件数は17年219件、18年211件から今年は19件(同)と大幅に減少した。
条例の運用に伴い、県警は熊本中央署に「繁華街特別対策室」を設置。署員が市の指導員と連携して夜間巡回するなど監視の目を強化してきた。署幹部は「条例ができたことで職務質問をしやすくなり、盗撮や銃刀法違反など他の犯罪抑止にもつながっている」と話す。市内繁華街の防犯対策に取り組み、新条例制定を働き掛けた市防犯モデル地区推進委員会の田尻恭久会長(59)は「街と市、警察が連絡を密にするなど良い相乗効果も生まれた」と手応えを感じる。
しかし、客引きの取り締まりは、あの手この手で法のすき間を突いてくる悪質業者とのいたちごっこだ。年末の忘年会シーズンを控え、再び被害が急増する恐れもある。県警によると条例施行後、取り締まりを逃れるためにチラシやティッシュ配りを装って街に立ち、客引きをするガールズバーの従業員の姿も確認されたという。
悪質な客引きがなくならない背景には、高額な広告料を払うより安価で確実に利用客を増やせるとして、悪質業者と安易に契約してしまう飲食店側の問題もある。市の中心繁華街にある酒場通り繁栄会の谷口正也会長(76)は「客引きに頼らずとも各店舗が活気を取り戻せるよう、街としてどんな対策を打ち出せるかが今後の課題」と話した。
一言コメント
公表された店もあるのかな?
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