2850人削減へ 大規模早期退職者を出した富士通の社内事情
- 企業・経済
- 2019年5月31日
今年に入り上場企業の希望・早期退職者募集が急増している。これまでのリストラ型から、グローバル社会に対応するビジネスモデル型への変化が指摘されている。注目されるのが2850人の早期退職者を出した富士通だ。同社が早期退職者募集に踏み切った背景を幹部社員が語る。
「うちは昨秋に事務部門社員の3割に相当する5000人の配置転換を実施しました。本体より稼ぐSE子会社3社を吸収合併したことで、もともと多かった間接部門の社員がさらに浮いたためです。配置転換先はほとんど営業部門への異動でした」
さらに聞いてみると、深刻な社内事情がうかがえる。
「間接部門の社員はSE関係の会社、及びSE担当から総務、経理に回されたケースが圧倒的に多く、『技術者が総務で何の仕事をしろというのか』『ソフトの開発をやらせないから稼げないんだ』といった不満を仲間同士でまき散らす者が増えてきた。こんな社員でも辞めろとは言えません。文句を言うなら稼いでこいと、ほぼ全員を営業に配置転換したんです」
そして、昨年12月から今年1月末まで、45歳以上の社員を対象に早期退職者の募集を実施。同時に配置転換の対象者全員に面談を行い「応じない場合は人員削減する」(塚野英博副社長)と迫ったのだ。最終的に当初の5000人のうち約6割に当たる2850人が早期退職に応募した。先の幹部社員が言う。
「うちは外資系企業と争う仕事が多いのですが、彼らと戦うとなれば、やる気のない社員ではとても太刀打ちできません。ところが部下たちからは、『給与もそこそこもらえるし、現状の生活で何も不満がない』という声が出てくる。うちの会社にいれば定年まで大丈夫と本気で思っている。こんな社員が増えたら、会社は潰れます」
同社は60歳定年で、定年後は希望すれば65歳まで再雇用が可能になる。今回の早期退職制度では、65歳まで富士通で働いた金額を退職金とは別に支払う優遇措置を付けている。
「そのおカネをもらった上、次の会社も紹介するという優遇をしてでも辞めて欲しい社員が数多くいたということです。実は、本来会社が辞めさせたい人員は5600人でした。そのうち面接でまだやる気があると見て、残した社員は2750人でした」(前出の幹部)
希望・早期退職者募集企業の調査をしている東京商工リサーチの友田信男常務が言う。
「IT化やグローバル社会の中で、企業は生き残りのため新しいビジネスモデルを模索しています。それに対応できず、付いていけない社員を対象にするのが、今の早期退職者募集です。企業の変化に対応できなければ若手も早期退職の対象になる。この動きは今後さらに加速していきます」
アステラス製薬、中外製薬など業績の良い製薬会社も早期退職者を募集した。人手不足がいわれる中、好業績で人材が集まる上場企業だからこそ、思い切った早期退職者の募集ができるのだ。
一言コメント
それでも、多額の退職金が出るだけマシかもしれない。
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