宿泊税、福岡市と県が合意へ 全国初の「二重課税」 来年度の導入目指す
- 政治・経済
- 2019年5月25日
宿泊税の導入を巡って対立していた福岡県と福岡市は、県と市がそれぞれ創設した上で、同市内の1人1泊の税額を県税50円、市税150円(2万円以上はそれぞれ50円、450円)とする方向で最終調整に入った。24日午後に小川洋知事と高島宗一郎市長がトップ会談し、合意する見通し。県と市がともに徴税する全国初の「二重課税」となるが、宿泊事業者の負担を軽減するため、徴税事務は市に一本化する。県と市は今後、それぞれ条例改正や総務相の同意などの手続きを進め、来年度初めの導入を目指す。
宿泊税を巡っては、県と市がともに導入を主張して激しく対立。昨年度は、県と市がそれぞれ別々に制度設計を検討する有識者会議を発足させ、税額や課税対象などを決定した。
税額については、市が宿泊料1人1泊2万円未満は200円、2万円以上は500円と設定。県は1人1泊一律200円とするが、市も課税する場合は「二重課税」を容認し、県税100円、市税100円とする案を示していた。
一方、県と市の「二重課税」となれば、ホテルや旅館での徴税事務が煩雑になるほか、税額が過重になる恐れもあるため、県と市は昨年11月から事務レベルの協議を開始した。
しかし、市はこれまで観光やMICE(国際会議や展示会など)の振興に注力してきたことや、二重行政の弊害から市税単独での導入を主張。県は、観光の広域性の観点から県が徴税すべきだとの考えを譲らず、協議は平行線をたどった。小川氏が3選を果たした4月の知事選では、高島氏が市税優先を掲げる新人候補を支援するなど対立が激化していた。
知事選後からは、事務レベルの協議を重ねる中で互いに譲歩。市側が、市内での県税課税を容認する一方で、宿泊事業者の事務負担を軽減するため、市が徴税事務を一括して担い、宿泊料2万円未満の税額については県税と市税で計200円に収まるように調整することで歩み寄った。
県と市は最終的な合意を受けて、税額や課税対象などを定めた条例案を6月の県議会と市議会にそれぞれ提案する方針。条例案が可決されれば、県、市ともに速やかに総務相との協議に入る意向だ。総務相の同意を得るには数カ月かかる見込みで、その後の周知期間を経て、県と市は来年度初めの導入を目指す。
宿泊税は、東京都や京都市など全国4自治体が導入済みで、九州では初めてとなる。
総務省によると、宿泊税を導入しているのは東京都、大阪府、京都市、金沢市の4自治体。北海道倶知安(くっちゃん)町は11月から実施する。いずれの自治体も訪日外国人客(インバウンド)の受け入れ整備など観光振興に充てることを目的にしている。
東京都は全国で初めて2002年10月に導入。17年1月には大阪府が、18年10月には市町村として初めて京都市が続いた。
税額や課税対象は自治体により異なる。1人1泊当たりの宿泊料に対し課税するのが基本で、東京都以外は民泊も対象にしている。東京都はビジネス客などに配慮し宿泊料1万円未満を免税にし、1万5000円より安ければ100円、高ければ200円を課す。一方、他都市より観光客の割合が多い京都市は、2万円未満が200円、それ以上は500円あるいは1000円を課税する。修学旅行の児童生徒、引率者は免除している。
ホテルや旅館の宿泊客に課す地方税。使途を特定した「法定外目的税」で、導入には総務相の同意が必要。国内では2002年に東京都が初めて導入し、訪日外国人客の増加を受けて創設する自治体が増えている。福岡県は、1人1泊一律200円で導入した場合、県全体の税収を年間36億円と試算。福岡市は、宿泊料1人1泊2万円未満に200円、2万円以上に500円で課税した場合、市内の税収が年24億円程度に上ると想定している。
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これでいいのか悪いのか…
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