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苦戦の中小採用、「社長の魅力」で勝負 実践型インターンで成長環境「見える化」も


 2020年卒大学生の就職活動は学生優位の売り手市場で進み、知名度が低い中小企業にとって厳しい採用環境が続く。会社説明会を開いても学生は集まらず、内定を出しても辞退され、人手不足は中途採用で補うしかないと諦めムードも漂う。こうした中、一緒に働きたいと思われる社長の人柄で魅了するよう促したり、長期インターンシップ(就業体験)で会社の面白さを喚起したりして奮起を促す人材コンサルティング企業が現れた。成長機会を求める学生にアピールする作戦だ。

◆学生に人物像をPR

「意志の強さや情熱で会社を引っ張る社長はチャーミング。知名度の高い大企業を目指しがちだが、社長の魅力で選ぶのもありかなと思った」

4月10日、東京・虎ノ門で「この社長と働きたい」というチャーミングな社長ナンバーワンを学生が決めるコンテストが開かれ、学生審査委員を代表して田代葵さんがこう論評し、今の学生が求める一つの会社像を示した。ポイントは成長機会を積極的に提供してくれる職場環境であり、それを牽引(けんいん)する社長の器だ。

こうした魅力の持ち主と認められた5人のファイナリストがこの日、集まった約650人の学生・社長の前でプレゼン。最もチャーミングな社長に選ばれたサラダボウル(山梨県中央市)の田中進代表取締役は「(審査委員から名付けられたキャッチコピー)『農業界のファーストペンギン』らしく、仲間と新しい時代を切り開いていく。農業の新しいカタチに挑戦しており、若い人には失敗できるチャンスを与え成長を促したい」とあいさつ。集まった学生に一緒に働こうと呼びかけた。

主催のESSPRIDE(エスプライド、東京都渋谷区)の西川世一代表取締役は「学生はお金を稼ぎたくて会社を選ぶわけではない。仕事を通して成長を実現できるかどうか。リーダーの生き方であり、人物像で選ぶ」と指摘する。情報収集能力にたけた学生はシビアに企業を見ており、社長はリアルな姿をさらけ出すべきだという。

ファイナリストの一人、葬祭サービス業の八光殿(大阪府八尾市)の松村康隆社長は「失敗できない仕事に自信と誇りをもち、究極のサービスを提供していると学生に話している。ある学生は『究極のサービスに気づいた』といって決まっていたホテルを辞退して入ってくれた」と話す。学生から「経営理念から苦労してきた社長と分かり、ついていきたいと思った」と評価された。

「お客さまに寄り添う覚悟が一緒に働きたいという気持ちにさせられる」と認められたのはエン婚活エージェント(東京都新宿区)の間宮亮太社長。「就活の土俵にすらあげてもらえず苦労したが、学生に発信してこそ新しいメンバーを得られることが分かった。その機会を作りたい」と前向きにとらえる。

「就職は結婚と同じ。面接など合計5、6時間会って、一方通行の話を聞いて決めるべきではない」。こう言い切るのは人事コンサルティングを手掛けるLegaseed(レガシード、同港区)の近藤悦康代表取締役。

売り手市場が続く中、とりあえず内定を出して意思決定を迫る企業が増加していることを懸念。相手がその気になっていないのにプロポーズしているようなものでミスマッチにつながりかねないという。

◆成長環境「見える化

求人倍率は、学生に人気の有名企業で0.3~1倍と競争は激しい。これに対し中小企業は9.9倍。知名度が低い中小企業を初めから第1志望にする学生は少ない。その中で入社したいと思わせるには「『ここが好き』と学生をひきつける魅力が必要。長期インターンで会社を理解する時間を設けると就職したい気持ちが醸成されていく」(近藤氏)というわけだ。入社後の定着率も高まる。

創業6年目のレガシードは年間1万人を超える学生が会社説明会に応募し、2日間、3日間のインターンを経て約10人に絞り込まれた学生は約半年間、プロの人事コンサルティングチームに配属され、課題解決手法を現場で学びながら報酬も受け取る。それだけに内容は厳しく、目標に到達せず悔しがり、もっと成長しないと社会では通用しないと痛感する。

成長できる環境を「見える化」することで優秀な人材を確保し定着につなげる。この実践型インターン体験組が今年4月入社9人のうち7人を占める。内定辞退者はゼロだ。離職者も18年以降、一人も出していない。

成功モデルの導入を採用支援企業に呼びかける。5年先、10年先の成長戦略を描くと、即戦力になり得る中途だけでなく新卒が必要と考え、応じる中小企業も増えてきた。

システム会社のARアドバンテストテクノロジ(同渋谷区)は昨年4月、求める人材を30人、今年は24人採用できたという。武内寿憲社長は「当社への思いを持った人材が入ってきたので『この会社をこうしていきたい』という発信が増えた。さらに既存社員も採用活動を通じて自身の成長や会社の体制整備が必要不可欠と気づいた。成長を感じる」と喜ぶ。

学生に選ばれる会社の条件は成長機会、アットホームな人間関係、働きやすい環境づくりといわれる。中小企業でも学生の要望を十分にかなえられるわけで、熱いメッセージの発信力が問われる。

SankeiBiz

 

 

一言コメント
ブラック社長には気を付けてね。


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