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「デフレでも急騰」大学の学費なぜこんなに上がった?


 日本は1990年代から長いデフレにあるが、この間も、大学の学費はほぼ一貫して値上げされてきた。家計は負担に耐えられず、今や学生の2人に1人は奨学金を利用する。なぜ、こんなに学費負担が重くなったのか。【毎日新聞経済プレミア・渡辺精一】

◇深まった私立大「学費依存」

大学の2016年度入学者の「入学金+年間授業料」は、国立大81万7800円(国の標準額)、公立大93万1200円、私立大113万1200円。88年と比べ、国公立大は約2倍、私立大は約1.5倍だ。

こんなに高くなった理由は、大学教育への公的支出が貧弱なことが大きい。高等教育への支出の家計負担割合は経済協力開発機構(OECD)加盟国中、英国に次ぎ2番目に高い。しかも、その重さは増すばかりだ。広島大高等教育研究開発センターの集計から、学生1人あたりの教育費負担(15年価格で算出)の推移をみると、政府負担は79年の79万円をピークに低下傾向にあり、14年は55万円。一方、家計負担は74年の41万円からからほぼ右肩上がりで、14年は120万円になった。

この謎を解くには、高度成長期に歴史をさかのぼる必要がある。60年代は家計所得が大きく伸び、大学進学率が高まった。受け皿になった私立大では定員増や大学・学部新設が進んだが、経営基盤は弱く、原資は学費値上げに頼った。これは学生運動の激化にもつながる。

そこで70年度に国の補助金(私学助成)が始まった。75年度には制度化され、80年には私立大の収入の3割に高まる。ところが国の財政難から、これをピークに補助金は縮小し、現在では収入の1割に落ち込んでいる。結果として私立大の学費依存はかえって深まっている。

◇定員割れ生んだ「30年で300校増」

92年をピークに18歳人口は減少しているが、大学・学部設置の規制は緩み、大学の数は18年度で782校とここ30年で300校近くも増えた。大学全入時代で私立大の4割近くは定員割れとなっており、特に新設大では経営悪化に直結している。有力大は人気が高いが、教育研究を充実させるための支出が増えている。学費を値上げせざるを得ない状況がずっと続いているわけだ。

一方、国立大は、高度成長期まで学費が低く抑えられ、70年度の年間授業料はわずか1万2000円だった。物価が上昇するなかでも、学費は「公共料金」とみなされ値上げには慎重だったからだ。

だが、70年代に入るとこれが一変する。私立大との「学費格差」が問題視されたためだ。私立大の学生数は国公立大の3倍。その学費が高騰し私学助成も始まったため、「是正」を理由に国立大の学費は毎年のように値上げされた。04年度には国立大の入学金額は私立大平均を超える。

国立大は04年に法人化されて独立採算となり、国の交付金は削減傾向にある。代わりに、国が定めた標準額から一定範囲(現在20%)内であれば大学が独自に学費を増減できるようになったが、その後の値上げはストップされている。各大学とも「値上げすれば交付金が削減される」(旧帝大の財務担当副学長)と恐れて横並びが続いてきたためだ。

ただし、教育研究の高度化が求められるなか、国立大経営は厳しい。19年度には、東京工業大、東京芸術大が値上げに踏み切った。今後は他大学の追随が予想される。

◇セットになっていた「奨学金改革」

だが、ここまで学費が高騰したのに、不満の声はさほど高まらない。理由は大きく二つ考えられる。

一つは「教育に出費を惜しまない」文化が根付いていることだ。低所得家庭でも他の支出を抑えて進学費用を捻出する「無理する家計」は多い。

もう一つは金融面の手当てができたためだ。国の奨学金事業は04年度に日本育英会から日本学生支援機構に改組され、それまで「低所得で成績優秀」の学生を対象としていた奨学金は、事実上誰でも借りられる「学生ローン」に代わった。学費負担を将来に先送りできる仕組みが整い、学生の4割はこの国の奨学金に頼っている。

家計の学費負担が大きいことは超党派で意見が一致するが、財源不足が立ちふさがる。「高等教育の無償化」が20年度から導入の方向だが、低所得世帯が対象で、中間層には軽減にならない。「高騰する学費」は解決策のないまま問題が先送りされている。

毎日新聞

 

 

一言コメント
そもそも大学の数自体が多すぎる。


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