有田焼、存在感揺らぐ? 陶器市、地元の「焼き物」出店減り岐路 業種多様化、幅広く集客するも懸念
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- 2019年3月18日
国内最大級の焼き物市として毎年100万人超が来場する有田陶器市(西松浦有田町)が、岐路を迎えている。飲食店や他産地の出店が増える一方で地元の焼き物店が減り、全出店の5割強に。売り上げ低迷や高齢化による撤退が目立ち、昨年は焼き物店減少などが影響し運営費収支が赤字に転落した。出店の多様化で魅力が増して幅広い層の集客につながっているものの、地元焼き物店の減少は「有田焼を売り込む本来の陶器市の意義が失われかねない」と懸念する声が上がっている。
有田陶器市は4、5月の大型連休中に開かれ、前回で115回を重ねた。全体の出店は、30~40年前に約700店だったのが、現在は600店ほど。焼き物店は450店で、うち地元の出店は300店強と全体の7割程度で、この30~40年で百数十軒が出店を取りやめた。この10年は焼き物以外の出店が目立つ。
背景には、売り上げ不振や高齢化に加え、場所代の問題がある。陶器市では自店舗以外に、空き店舗や駐車場などを借りて出店する。かつては旅館、料亭などの業務用食器の大量買い付けがあったが、近年は消費低迷で売り上げは減少傾向にある。一方で賃料は一部でバブル期ごろの金額に高止まりし、賃料を高く提示した他産地や飲食店に貸し先を変えられ、地元業者が撤退した例もあるという。
賃料は場所や面積によるが、1週間で20万~25万円が中心とみられ、「1日3万~4万円の賃料に加え、人件費や設営費を売り上げから賄うのは厳しい店もある」と主催する有田商工会議所は明かす。
町内のある窯元は数年前に、メイン通りの中心部から出店場所を変えた。以前の場所は昔からのつきあいで相場より安かったが、新たな場所は賃料が10万円ほど高くなった。「諸経費が安くなった分を差し引いても、中心部から離れたため割高感がある」という。「今はもうけを考えての出店ではない。宣伝や顧客サービスのためで、採算は度外視している」。出店理由にも変化が生じている。
地元焼き物店の減少は、運営費の収支悪化も招いた。約4千万円のうち3分の2は、焼き物店からの参加負担金。町内は規模に応じて2万3千円~100万円、町外は一律3万8千円。ここ3年ほどは焼き物店以外からも寄付の形で数千円の協力を求めている。「近年のイベントは来場者サービスを整えないと集客競争に勝てない。シャトルバスや駐車場の警備費を削るのも難しい」。収支改善の見通しが立たず、商議所は対応に苦慮する。
商議所の深川祐次会頭(61)は「焼き物の出店が減り続ければ、百十数年続く焼き物市としてのクオリティーが低下しかねない。メイン通りに焼き物屋が軒を連ねる風情を、町全体で守っていく方向で考えられないだろうか」と話す。
一言コメント
せめて焼き物店だけは賃料を優遇するとかできないの?
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