「次が見つからん」地方議員のなり手不足…失う二つの政治参加の機会
- 政治・経済
- 2019年3月6日
地方議会で進む「なり手不足」が二つの政治参加の機会を奪っている。無投票になれば、住民は意思表明の場を失い、議会で相次ぐ定数削減は、若者や女性といった多様な人材の門戸を狭める。4月の統一地方選では、候補者の定数割れが懸念される自治体も出ている。住民にとって最も身近な地方議会が存続の瀬戸際に立たされている。
「なかなか次が見つからん。足りるんだろうか」。2月下旬、大分県津久見市議会の一室で市議たちが表情を曇らせていた。4月に迫った市議選の候補者数が定数14に届くかギリギリだからだ。
4年前は無投票。現在欠員1で、今回は現職9人が出馬を予定。引退意向の議員による後任探しは難航している。「議会に仕事としての魅力がないのか。無投票や定数割れを阻止するため、不出馬を決めた人が出ざるを得なくなる可能性がある」。黒田浩之議長(46)は自嘲気味に語る。
同じく4年前に無投票の佐賀県多久市議会(定数16)は、4月の改選で定数を1減らす。区長会からは「2減」を求められたが、「各議員の負担が増し、さらに立候補者が減って負の連鎖となる」と判断した。
無投票が止まらない。前回統一選以降も、昨年の佐賀県神埼市議選(定数20)や今年1月の熊本県阿蘇市議選(同)が無投票に終わった。ともに2000年代の新市発足後、初だ。昨年の宮崎県五ケ瀬町議会の補欠選挙は候補者ゼロで、欠員1を解消できなかった。
なり手確保へ、報酬増に踏み切る議会もある。宮崎県新富町は元町議の町長の発案で、町議の月額報酬を約34%(7万2千円)引き上げたが、実際に候補者増へ結びつくかはまだ不透明。住民の反発を受け、撤回した議会もある。
西日本新聞の地方議会アンケートで、なり手不足の対策を「検討している」と回答した13議会のうち、大分県中津市議会(定数26)は選挙の一部経費を自治体が負担する「選挙公営制度」を挙げた。
市議会は11年から政策提言能力の向上を目的に、執行部抜きで政策テーマを決めて議員間で論議する「自由討議」を実施するなど、改革を実践してきた。それでも4年前の選挙は定数を1人しか上回らず、なり手確保へ危機感は強まった。
議会はポスター代や選挙カーの経費に公費を充てる制度の導入を市に要望し、昨年条例化した。藤野英司議長(66)は「公営制度で若者や女性など幅広い層から一人でも多く立候補できる環境整備が何より必要。有権者の政治参加を高める一助にもなる」と訴える。
「女性ゼロ」や首長提案の追認、政務活動費不正受給…。地方議会は、なり手不足にとどまらず、機能不全の姿も露呈している。議会にどう向き合うか、有権者もまた問われている。
宮崎県日之影町の会社員坂本泰雄さん(41)は昨年の町議選に合わせ、立候補予定者の公開討論会を開いた。14年に続いて無投票になる危機感を訴えたところ、手を挙げる候補が出てきた。その経験を踏まえ、坂本さんは力を込める。「選挙がないと『自分は一票一票が積み重なって議席を得ている』という議員側の意識が欠け、薄っぺらの町になる。地域の空気を変えるのは有権者だ」
一言コメント
かといって、さらに地方議員のレベルが落ちるのもねぇ…
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