市場落ち込み想定超え 中国新車販売28年ぶり減少
世界最大の自動車市場、中国で2018年の新車販売が28年ぶりにマイナスに沈んだ。中国内の経済が減速する中、米中の貿易戦争などで消費マインドが冷え込んだためだ。中国市場を重視してきた世界の車メーカーは戦略の転換を迫られる可能性もある。
◇個人消費鈍化が鮮明に
「昨年夏、限界に近い値下げに踏み切ったばかり。これ以上の値引きは厳しい」。北京市内にある中国メーカーの自動車販売店員は、厳しい表情を浮かべた。それでも値下げを持ちかけられると「税金分をこちらで負担する形ではどうでしょう」と応じることもあるという。中国メディアが「厳冬期」と表現する新車販売の不振が続き、値下げ合戦が過熱している。
中国市場の苦戦は元々、予想されていた。リーマン・ショック直後の09年から断続的に実施されてきた小型車減税が17年末で終了し、18年は減税終了前の駆け込み需要に伴う反動減が見込まれていたためだ。
しかし、「市場の落ち込みは想定以上」(外資系自動車メーカーの中国法人首脳)。国内経済の減速で個人消費の鈍化が鮮明になっている。米中貿易戦争に伴う先行き不安で高額商品の買い控えも広がり、販売不振に拍車をかけた。
不振が際立つのは貿易戦争でイメージが悪化した米ゼネラル・モーターズ(GM)などの米国勢に加え、中堅以下の中国地場メーカーだ。
中国には40を超える地場メーカーが乱立しており、安さを売りに生き残ってきた技術力の低いメーカーも少なくない。中国当局は自動車市場の不振が鮮明になった18年秋になっても具体的なてこ入れ策を示さず、逆に体力の劣るメーカーの統廃合に利用しようとした形跡がある。
しかし、風向きは変わりつつある。中国の経済政策を取り仕切る国家発展改革委員会幹部は8日、「自動車の消費を促す措置を講じる」と宣言し、政府主導の消費刺激にかじを切ると明らかにした。自動車は産業の裾野が広く、販売不振が長引けば幅広い業種に影響する。国内経済の減速に歯止めをかけたい当局も自動車の販売不振をこれ以上、放置できないと判断した模様だ。
自動車業界からは「政府の対策効果で今年下半期から販売が回復してくる」(日系メーカー)との期待の声があがるが、経済全体の落ち込みが続く限り、高額商品の自動車への逆風は収まらない。減税効果で生き残ってきた「ゾンビメーカー」の生き残りを許し、地場メーカー同士でシェアを奪い合う悪循環が温存されるリスクもあり、世界最大市場の混乱はしばらく続きそうだ。【赤間清広】
◇日本企業、一時的か注視
日本メーカーは、中国市場で前年割れが続くのか、それとも一時的なのかを慎重に見極める考えだ。今のところ「一時的」との見方が大勢だが、米中貿易戦争が収束しなければ市場全体の低迷も長引きかねず、減産などの対応を迫られることもありそうだ。
2018年の販売はメーカーによって明暗が分かれた。トヨタ自動車はモデルチェンジした「カムリ」などが好調で、前年比14・3%増の147万4500台。二つの電気自動車(EV)モデルを投入した日産自動車は2・9%増の156万3986台で、いずれも過去最高を更新した。
一方、スポーツタイプ多目的車(SUV)「CR―V」のリコール(回収・無償修理)があったホンダは1・7%減の143万2291台と足踏み。マツダは12%減の27万2322台に落ち込んだ。17年は4社とも過去最高を記録していた。
マツダは18年の販売実績について「中国全体の需要減少の影響を受けた」と説明する。日産も9月以降は前年割れとなるなど、影響が出た。
ただ、業界内では「中国の自動車保有率はまだ低水準で、伸びる余地は大きい」(アナリスト)との声は根強い。各メーカーとも「中国は重要市場」(マツダ)との姿勢は不変だ。
とはいえ、米中貿易戦争の決着がみえたわけではなく、需要が回復する保証はない。19年には生産・輸入台数のうち一定比率をEVなどにする環境規制も導入。佃モビリティ総研の佃義夫代表は「各メーカーは収益性の向上も含めた中国戦略の練り直しが必要」と指摘している。
一言コメント
28年増え続けたということも驚きだ。
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