進む役員報酬決定の透明化 ゴーン逮捕も後押し
- 企業・経済
- 2018年12月11日
有価証券報告書に報酬を過少申告した疑いで日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)が逮捕された事件を契機に、役員報酬への関心が高まっている。高額報酬への視線が厳しさを増す一方、日本企業の国際競争力強化に向けては優秀な経営人材を呼び込むだけの報酬水準も不可欠だ。企業側は役員報酬の決定プロセスの透明性や客観性を高める取り組みを急ぐ。
足元の日本企業の役員報酬水準は上昇傾向で、デロイトトーマツコンサルティングの調査によると、売上高1兆円以上の企業の社長の報酬総額(中央値)は9855万円と過去最高だった。それでも欧米企業との隔たりは大きい。最高経営責任者(CEO)の報酬総額は米国が16億8202万円、ドイツが6億4376万円、フランスが3億3632万円だ。
背景には、トップの報酬に対する価値観の違いがある。欧米ではプロスポーツ選手のように、経営手腕を高度な能力ととらえ、優秀な経営者には高額の報酬で報いる考え方がある。これに対し、生え抜きが多い日本の経営者は、従業員とかけ離れた報酬を受け取ることに及び腰だ。
高給への批判は報酬決定過程の不透明さも遠因だ。「一昔前、大半の日本企業の役員報酬は社長の一存で決まっていた」(デロイトトーマツの村中靖執行役員)ほか、現在も代表取締役に決定権限のある企業が過半を占める。ただ、日本企業の国際競争力強化に向けては、「経営者という職務の重さに対する理解を進め、欧米並みの水準を確保する必要がある」(同)。
鍵を握るのは、消費者や株主の納得を得られやすい報酬決定制度の構築だ。東京証券取引所も今年6月に企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を改訂。役員報酬の決定における客観性・透明性を強化すべく、上場会社に独立社外取締役などで構成される報酬委員会設置を求めた。
ただ、各企業の取り組みは緒に就いたばかりだ。東証の調査では、東証1部で報酬委員会を設置する企業は前年比約3ポイント増の37.8%だが、経済産業省の調査では、欧米では調査対象の企業すべてが同委員会を設置している。経営手腕の成果を報酬に反映させやすい株式報酬制度も、欧米では9割以上の企業が導入済みなのに対し、日本企業の採用率は28%にとどまる。
三井住友信託銀行証券代行コンサルティング部の田崎伸治部長は「投資家は企業のガバナンスに目を光らせており、お手盛りで『役員報酬は社長に一任』という企業は、もはや生き残れない」と指摘している。(佐久間修志)
一言コメント
中小企業も透明化すると面白い。
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