ベルギー高級チョコ「ゴディバ」日本事業売却へ 三菱商事など買収に名乗り
- 企業・経済
- 2018年11月28日
トルコの大手食品会社ユルドゥズ・ホールディングが、傘下のベルギーの高級チョコレート会社ゴディバの日本事業などの売却手続きに入ったことが分かった。このほど1次入札を実施し、三菱商事グループや投資ファンドなど10社近くが名乗りを上げたもようだ。売却額は1千億円超となる可能性もある。国内のチョコレート市場は成長が続いているだけに、優良ブランドの争奪戦は熱を帯びそうだ。(上原すみ子)
1次入札は日本、韓国、オーストラリアなどのゴディバ事業が対象で、その中心は日本のゴディバジャパンだ。百貨店内や路面店などで約300店を展開し、平成29年度の売り上げは22年度に比べ3倍弱の398億円と大幅に増加している。
好調な日本のゴディバ事業が売りに出された背景には、親会社の台所事情がある。ユルドゥズは、日清食品と即席パスタ麺の合弁会社も展開する大手食品会社。2007年に米キャンベル・スープからゴディバ事業を買収し、その後も買収による拡大路線を続けた。
だが、今年夏以降のトランプ米政権とトルコ政府の関係悪化によるトルコ通貨リラの急落で外貨建て債務が増大。早期に現金収入を得られる好調なゴディバの一部事業売却を迫られた。
入札には三菱商事がグループの丸の内ファンドと組んで応じたほか、米投資ファンドのベインキャピタルやカーライル・グループなど10社前後が名を連ねる。年内から来年にかけ、2次入札が締め切られる見通しで、来年半ばに売却先が決まりそうだ。
ただ、投資余力の小さい日本の菓子メーカーは「1千億円規模の(高額の)買収金額では統合効果は少ない」と静観の構え。あるチョコレート大手の幹部は「一般的なチョコメーカーが高級チョコを傘下に収めると高級チョコのブランド価値が下がる可能性もある」と指摘する。
これに対し、三菱商事は、ユルドゥズとのビジネスをかねて拡大したい意向だっただけに、金額勝負のファンドと一線を画し、提案力で争奪戦を勝ち抜きたい考えだ。
一昨年、三菱商事がユルドゥズに持ちかけたのがローソンとの協業。昨年から、ゴディバと共同開発のスイーツを展開し好調だ。
三菱商事の最大の狙いは、出資するシンガポールの農産物商社オラム・インターナショナルとの相乗効果の発揮だ。平成27年に約1300億円を投じて資本参加し、ナッツ類やコーヒーなどを世界大手食品メーカーなどに販売している。中でもカカオの加工事業は世界大手の一角を占める。ゴディバのブランド力を手に入れられれば、顧客目線の商品開発や販売網強化につながるとの思惑がある。
少子化の中でも昨年の日本メーカーのチョコレートの販売額は前年比4・6%増の5500億円と、7年連続で過去最高を更新した。カカオの持つ健康効果が着目され、子供のおやつにとどまらず、大人の市場開拓につながっている。
ゴディバは高級チョコレート市場での存在感が大きく、ファンドにとっても魅力的な投資案件だ。争奪戦の過熱で価格がつり上がる可能性もある。
チョコレートをめぐっては、伊藤忠商事が筆頭株主の不二製油グループ本社も今月、米ブロマーの買収を発表。江崎グリコも今年3月、製法や原料にこだわる高品質のクラフトチョコレートの米製造販売会社を買収すると発表しており、世界のチョコレート市場で日本企業の存在感が高まっている。
■ゴディバ 1926年にベルギー人のショコラティエのピエール・ドラップス氏がブリュッセルで創業。原料や熟練した職人技によるこだわりのデザインでチョコレートを創造している。世界100カ国以上で店舗などを展開し、1972(昭和47)年に日本に初出店し、94(平成6)年にゴディバジャパンを設立して本格的に展開した。
一言コメント
どこが引き受けるか興味深い。
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