政府は5日、韓国の元徴用工をめぐる訴訟で韓国最高裁が日本企業に賠償を命じる確定判決を出した問題で、韓国政府が賠償金の肩代わりを行う立法措置などを取らない限り、国際司法裁判所(ICJ)に提訴する方針を固めた。また、裁判手続きに関する韓国側との交渉、折衝などが必要なため、長嶺安政駐韓大使の召還は行わない。

ICJで裁判を開くには原則として紛争当事国の同意が必要で、手続きには(1)相手国の同意を経て共同付託する(2)単独で提訴した上で相手国の同意を得る−という2つの方法がある。政府は韓国から事前に同意を得るのは難しいことから単独提訴に踏み切る。

その場合も韓国の同意は得られないとみられ、裁判自体は成立しない可能性が高い。だが、韓国に同意しない理由を説明する義務が発生するため、政府は「韓国の異常性を世界に知らしめることができる」と判断した。

河野太郎外相は既に、徴用工問題が1965(昭和40)年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」としていることや、判決が国際法に照らしていかに不当かを英文にまとめ、在外公館を通じて各国政府やマスコミに周知させるよう指示している。

政府は今回の判決だけでなく、2015(平成27)年の慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した日韓合意に対する韓国側の不履行など、度重なる韓国の不誠実な対応についてもアピールする機会とする考えだ。

政府は今回の判決は日韓基本条約の基盤を崩壊させかねない問題だと重視しており、政府高官は「今回は徹底的にやる」と語る。韓国側が現在、「韓国政府内でいろいろと判決への対応を検討している」と釈明しているため当面は対応を見守るが、外務省幹部は「おそらく韓国は有効な措置は取れないだろう」とみている。

この問題をめぐり、安倍晋三首相は1日の衆院予算委員会で、「国際裁判も含めあらゆる選択肢を視野に入れて毅然(きぜん)として対応していく」と述べていた。