<株価急落>マーケットに潜む三つの「死角」
- 経済情報
- 2018年10月14日
世界の株式市場で大幅な下落が続いています。株価下落の原因は何か。今後の市場をどのように見ていけばいいのか。ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストに聞きました。(聞き手=編集部・平野純一)【毎日新聞経済プレミア】
◇米国の長期金利が上昇
--世界の株式市場で株価の大幅な下落が起きています。
◆井出真吾氏 株式市場は「潮目」が変わったかなと思います。大きな原因は米国の金利上昇です。年初に2.5~2.6%だった10年債金利は、いま3.2%程度まで上がってきました。金利が上がるならリスクをとって株に資金を入れる必要がなくなります。
米国で特に下落が顕著なのがハイテク株です。7月ごろから一貫して下落傾向にあります。フェイスブック、アマゾン、グーグル、さらに中国の検索大手バイドゥ(百度)などを加えた10銘柄で構成する「FANG+(プラス)」という指数があり、7月から直近までで13%程度下落しました。年初から「FANG+」は7月までに30%程度上がっていましたので、金利が上がれば割高に見えます。
--ただ、米国の景気は良いようです。
◆たしかに景気は良いです。10月5日の雇用統計では失業率が3.7%と48年ぶりの低水準でした。米国企業の業績も好調で、前年比で20%程度の増益となっています。
ただ、米国企業の利益増の半分程度は「トランプ減税」の効果によるものです。この点は注意が必要で、問題は来年の業績がどうなるのかです。
◇米国株調整の影響
--そのような中で、日本株はどのように見ていけばいいのでしょうか。
◆米国株が調整すれば、その影響は免れません。その場合は日経平均株価が大きく下落することもあるでしょう。しかし、日本株は値上がりしてきたとはいえ、株価の価値を測るPER(株価収益率)で見るとまだ割安です。今後2万5000円程度まで上昇しても不思議ではありません。
また、日本企業の今年度の想定為替レートは1ドル=107円で、これと比べるとまだ5円程度の円安水準なので、為替面で利益が圧迫される心配はありません。しばらく調整しても、来年春までに2万5000円という見方でいいと思います。
--米中貿易戦争が勃発していますが、中国経済はどのように見たらいいでしょうか。
◆米中貿易戦争が中国経済にじわじわと影響してくる可能性はあります。先日のポンペオ米国務長官と中国の王毅外相の会談ではかなり激しい非難の応酬でした。大国同士なので引くに引けない状態になると、これはまずいです。
中国で生産しても輸出できないとなれば、資本投入をやめようということになります。実際に工場を中国から他のアジア諸国に移す動きも出ているようです。当局は預金準備率を下げるなど対策は打っていますが、それらの効果を見ていく必要があります。
◇リスクシナリオを考えておく必要性
--今後の日本株の見方で重要な点は何でしょうか。
◆メインシナリオは、すでに述べたように2万5000円程度までの上昇を考えていいと思います。ただ、もちろんリスクシナリオを考えておかなければなりません。マーケットを揺るがしかねない「死角」は三つあります。
一つ目は、米国のハイテク株のブーム終息です。下落は一時的なものかもしれませんが、本格的な下落に転じた可能性もあります。ここを見極めなければなりません。
二つ目は、中国経済の動向です。このまま上海株が下げ止まらないとちょっと怖い。人民元の下落も「悪い通貨安」という感じがします。実体経済が急激に悪化することはないと思いますが、マーケットは先読みして大幅に動くことがあります。
三つ目は、日米通商摩擦です。今後は日米物品貿易協定(TAG)で交渉することになりますが、11月の米中間選挙で共和党が負けるとトランプ大統領の日本に対する圧力が強まる可能性があります。その意味では「政治リスク」も株価を動かす大きな要素になりえます。(インタビューは10月9日)
一言コメント
不安定要素は少なくないということか。
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