個人データを活用する「情報銀行」の実現へ、日立・東京海上日動・日本郵便らが実証実験
■本人の同意を得てデータを活用する「情報銀行」
スマートフォンやオンラインサービスの普及によって、大量の個人データが生成されている。しかし、その個人データをビジネス活用するには、安全性や透明性の確保が必要となる。データを活用したい企業と、そのデータを自身でコントロールしたい、プライバシーを守りたい個人の間でどのような合意のもとにデータを扱うべきか、行政も含めてさまざまな取り組みが各国で行われてきた。
現在、このような課題を解決する仕組みとして「情報銀行」の検討が進んでいる。情報銀行とは、個人あるいは事業者が保有する個人データを、本人の同意の下で安全に収集・管理・提供する仕組み。本人が情報銀行のシステム上でデータを提供する事業者を選ぶとともに、本人があらかじめ指定した条件などに基づいて情報銀行が事業者へデータ提供を行う。事業者は、受け取ったデータを活用して個人のニーズに合ったサービスを提供することができる。
データ利用の安全性・透明性を確保するため、情報銀行にはセキュリティ対策のほか、事業者によるデータの利用履歴を確認できる仕組みなどが求められる。このような情報銀行が担うべき役割や要件について、経済産業省および総務省が2018年6月に認定基準を公表するなど、情報銀行の実現に向けた取り組みが進められている。
今回、日立製作所、日立コンサルティング、インフォメティス、東京海上日動火災保険、日本郵便、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムは、情報銀行における個人データの収集・管理・提供の仕組みや個人データを活用したサービスの実現可能性を検証するため実証実験を行う。
個人データとしては、性別や世帯構成等の一般的な個人データのほか、各家庭の電力使用量や個人の活動量データなど、今後の普及が予想されるIoT(Internet of Things)に着目し、センサから生成されるデータも取り扱う。
■実証実験における各社の役割
日立製作所は情報銀行事業者として、実証実験に参加する社員200名の募集と情報銀行システムの構築・運営を実施。参加者のデータを保有するデータ保有者として、参加者の活動量センサから得られる健康データ・収入データを本人の同意の下で情報銀行に提供する。
日立コンサルティングは、情報銀行が個人・データ保有者・データ利用者との間で締結する契約書の雛型となるモデル約款(「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」において公開)の適切性、十分性等を検証するほか、認定基準の妥当性等についても検討を行う。
インフォメティスはデータ保有者として、参加者の各家庭に電力センサを設置し、電力データの収集及び情報銀行へのデータ提供を行う。
以下3社はそれぞれデータ利用者の立場で実験に参加。東京海上日動は家電向け保険・サービスの開発可能性を、日本郵便は在宅率に応じた宅配ルートの改善可能性を、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムはプロファイルに基づくWeb広告の配信効果をそれぞれ検証する。
今後は実証実験の結果をもとに、安心・信頼できる情報銀行の条件を整理し、認定基準の改善案として提示することで「情報銀行」の社会実装を加速していく。
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