<マンション>家賃上昇「パリ化」する東京都心部
- 経済情報
- 2018年8月26日
世界的な大都市であるパリは、中心エリアの家賃相場が極めて高いですが、東京でも同じ動きが始まっているのではないかと思える兆候が、統計データから読み取れます。マンション事情に精通する住宅ジャーナリストの櫻井幸雄さんがリポートします。【毎日新聞経済プレミア】
パリは中心エリアの家賃相場が極めて高い。あまりに高いので、パリ市は芸術家のために家賃の安い公共賃貸住宅を用意している。「芸術の都・パリ」の伝統を守るため、若くて才能もあるが、お金のない芸術家に住む場所を安く提供しているわけだ。
◇買うには高嶺の花、家賃も高水準
パリでは家賃相場が極めて高いため、マンションの所有者は、中古で売らず、賃貸にして高収入を得る道を選ぶ。そこで「買いたくても買えない。住みたかったら賃貸。でも、その家賃は高い」という住宅事情が生まれている。
そのような動きが東京でも始まっているのではないか、と思える兆候がある。各種データによると、ここ数年、首都圏では家賃相場の上昇が続いている。
もちろん「東京の家賃が軒並み上がっている」とまでは言えない。
家賃3万円以下の風呂無し老朽化アパートが徐々に姿を消し、激安物件がなくなったことで、平均家賃が上がっているのかもしれない。あるいは、家賃50万円以上の高級賃貸物件が増えたことで、平均家賃が引き上げられたとも考えられる。
低家賃物件が減り、高家賃物件が増え、中間の賃貸物件もわずかに値上がりしたことで、家賃の平均値が上がり続けたというところだろう。
◇都心マンションも高額化
とはいえ、東京の賃貸相場が上がっていることは無視できない動きである。
賃貸の家賃が上がり続ければどうなるか。年金支給額が先細りとなれば「一生、賃貸でいい」という考え方は、少なくとも都心部では成立しにくくなる。都心部に分譲マンションを多く所有し、大家業を手広く営む人が勝ち組となる。
現在、外国人のマンション購入が増えているので、「外国人大家さんの賃貸を日本人が借りる」という事態が増えることも予想される。都心の都営住宅など、家賃の安い公共の賃貸住宅には入居希望者が殺到するだろう。「家賃が上がり続ける」影響は、今後、広範囲で深刻な問題になることが懸念される。
そう考えれば、現在の分譲マンション市場の動きも説明がつく。ここ数年、都心マンションの多くが「普通の人はとても手が出せないだろう」という価格まで値上がりしている。高額化した都心マンションは、必ずしも売れ行き好調ではないのだが、値下がりは起こらず、むしろさらなる値上がりが生じている。パリのようになるのであれば、高い分譲価格でも価値があると考えられ、値下がりが起きないわけだ。
◇郊外では値下がりも
といっても「賃貸派は将来住むところがなくなる」という話にはならない。東京では、中心部の不動産市況はパリ化しているが、郊外では、不動産価格が値上がりするどころか、値下がりしている場所もあるからだ。
駅から少し離れた場所のマンション、注目度が低いエリアのマンションなどは、3LDKが3000万円台、4000万円台で販売され、賃貸住宅の家賃相場も安定している。
山手線の内側に代表される都心部では賃貸で暮らしにくくなるが、郊外は心配なし。賃貸住宅では、そういう二極化が進むと考えられる。
一言コメント
地震とか怖くないんかなあ…
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