障害者雇用へ環境整備 能力引き出す工夫と待遇 千葉県内中小企業
国や千葉県などで「障害者雇用水増し」が相次いで発覚する一方で、県内には障害者雇用に力を入れる中小企業がある。障害者それぞれに合った環境を整備し、能力を引き出す工夫を凝らしている。
障害者雇用促進法が4月に改正・施行され、障害者の「法定雇用率」が引き上げられた。法改正前より多くの企業が対象となった。
船橋市高瀬町の総合改修工事業「ティーエスケー」は、およそ10年前から障害者雇用に力を入れる“先進企業”。広々としたフロアの中に机1台が置かれ、壁で仕切られている。用意された業務日報には「気分レベル」と書かれた欄に数字が並ぶ。
従業員192人の同社では、精神障害や視覚障害がある30~40代の男女5人が勤務。総務部で名刺作りや資料の電子化、物品の管理や発注作業などを行っている。中には社会経験がなかった40代の男性も。同社の本多俊行常務は「社員からの相談で雇用した人がほとんど」と職場の理解が進んでいると強調する。
障害者雇用で重視するのは「働きやすさ」の環境づくり。視覚障害の男性には、パソコンの画面を拡大する設備を用意。周囲の音に敏感な発達障害の男性は、机を壁で囲って集中できるよう変えた。
ほかにも、オリジナルの業務日誌を作成。個別にフォーマットを変え、業務内容だけでなく疲労や気分などのコンディションも記入。指導役などが毎回コメントを寄せる情報交換ツールとして活用している。
一方、雇用義務の対象ではないが、積極的に障害者を雇用する企業も。船橋市海神町南の小売業「三和商事」は従業員約20人。5年ほど前に職場体験実習を通じ、軽度の知的障害がある男性(23)を雇用した。男性は主に学校の歯科や耳鼻科健診に使う器具の消毒、防災備蓄商品の梱包(こんぽう)作業を行う。
漢字が苦手なため、ひらがなで一日の作業をホワイトボードに掲載。写真で作業過程を示し、数えやすいようシートを作るなど工夫を重ねる。
倉持晃所長は「外注の作業を彼に任せるようになった。その人の特性を考えて仕事を任せる。互いに成長するチャンス」と意義を強調。
船橋市は、障害者雇用に優れた取り組みをする中小企業として、両社に市障害者雇用優良事業所表彰「ふなばし●あったかんぱにー」を贈った。
厚労省も支援策を拡充。4月から雇用義務に加わった精神障害者を試行的に雇用する「障害者トライアル雇用」の期間や助成金を充実させた。ハローワークには、発達障害者の雇用をサポートする専門家を増員。企業向けに「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」を開催し、職場での障害者との接し方などを学べる。
千葉労働局は「職場の理解が大切。就労者だけでなく事業者に対するチーム支援、医療機関との連携などを実施したい」と社会全体での支援が必要とした。
※●は白いハート
障害者雇用促進法の規定により、事業主には「常時雇用している労働者数」の一定率以上の障害者を雇用する義務がある。厚労省は4月、企業の法定雇用率を0・2%引き上げ、雇用義務に精神障害者も加わった。障害者雇用義務の企業は従業員50人以上から、45・5人以上となり、新たに雇用義務対象となる企業も。千葉労働局によると、2017年6月1日までの県内の雇用障害者数は9937・5人で14年連続で最多。ただ、実雇用率は1・91%で全国平均1・97%を下回り全国ワースト3位となっている。
一言コメント
水増しはしないでね。
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