<沸き立つ北上 東芝メモリ進出>(上)期待感/関連産業集積へ好機
- 企業・経済
- 2018年7月30日
投資規模1兆円の巨大プロジェクトが動きだした。半導体大手「東芝メモリ」(東京)の新工場建設に沸き立つ北上市。東北屈指の製造業集積地へと変貌を遂げつつある現地から報告する。(北上支局・布施谷吉一)
「この日が来るのを待ち望んでいた。感無量だ」。北上市の高橋敏彦市長は24日、満面の笑みで東芝メモリ新工場の起工式に臨んだ。
記憶媒体「3次元フラッシュメモリ」を生産する製造棟は2019年秋の完成予定。20年には量産を開始し、全世界へと出荷される。成毛康雄社長は「1棟だけではなく今後も投資する」と拠点化を明言した。
<「需要は旺盛」>
ただ、新工場着工までの道のりは決して平たんではなかった。
親会社だった東芝が工場新設を発表したのは2008年。その直後、リーマンショックが世界経済を襲う。東芝本体も経営危機に直面し、新工場の着工は無期限延期になった。
広大な工場建設予定地を用意したまま長く「待ち」の姿勢を余儀なくされた北上市。世界同時不況と経営危機の二重苦をはね返したのは、情報通信技術(ICT)の将来性だった。
東芝メモリが手掛ける記憶媒体「フラッシュメモリー」はスマートフォンなど暮らしの中に幅広く浸透し、世界の半導体売上高は15年で41兆円に達した。30年には80兆円を超えるとの試算もある。
世界シェア2位の東芝メモリは製造拠点を三重県四日市市に持つが、世界レベルの開発競争を勝ち抜くには新たな拠点の整備が急務だった。東芝メモリは「デジタルデータ量は今後も増える。需要は旺盛」と世界市場の先を読む。
<人材流出防ぐ>
待望の新工場着工に地元の期待も大きい。
「いわて半導体関連産業集積促進協議会」の伊藤秀一会長(デンソー岩手社長)は「地場企業が活躍する場が広がる。関連産業の集積地域として内外にアピールできる」と歓迎する。
岩手県の16年製造品出荷額は2兆3100億円(工業統計調査速報)。東芝メモリの進出で「そう遠くない将来、3兆円に達するだろう」と県産業界は強気のそろばんをはじく。
北上市では11日、現地子会社「東芝メモリ岩手」の高校生向け会社見学会があった。東芝メモリ進出は、来春、就職予定の高校生たちにもビッグニュースとして伝わっており、見学者の多くが「将来性がある企業」と受け止めた。
県ものづくり自動車産業振興室の瀬川浩昭室長は「部品や機械、資材調達の動きは県北部や沿岸部にも広がる」と説明。「人材流出を防ぐだけでなく、他地域からの人材を呼び込む契機にもなる」と期待を膨らませた。
一言コメント
地方はどこも企業誘致に必死だ。
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