福岡市・天神に百貨店と広場とオフィスを創出 開業20年のエルガーラ
- 流通
- 2017年3月10日
「ビッグバン」相乗効果目指す
福岡市・天神の市街地再開発ビル「エルガーラ」が3月1日、開業20周年を迎えた。核テナントとして博多大丸の東館が入り、ホールやオフィスも備えた複合ビルの開業は、天神地区の都市機能を向上させた。天神地区では現在、新たな再開発「天神ビッグバン」を控えており、相乗効果をどう発揮するかが問われている。
20周年を迎えた最初の土曜日。パサージュ広場で、福岡市中央区の一坊寺治子さん(84)、船戸高代さん(53)親子が休憩していた。1997年の博多大丸東館の内覧会も訪れたという2人。「いつ来てもこの辺は落ち着く。エルガーラ開業でさらに天神が活気づいた」と振り返る。
エルガーラは、国体道路周辺の混雑解消と土地の高度利用を図るため、福岡市が88年から行ってきた「天神地区第1種市街地再開発事業」の中核。延べ床面積は6万9100平方メートルで、地上13階、地下5階に商業・文化・業務の三つの機能を備えた。
エルガーラ開業の前後は、岩田屋Zサイド(96年)や福岡三越(97年)など商業施設のオープンが相次ぎ、「第3次天神流通戦争」と言われた。岩田屋で広報部長などを務めた梶原善二さん(70)は「天神の商圏がより広がり、県外からの集客力が上がった」と話す。増床効果や他店も含めた天神地区の商業集積で、博多大丸は97年度の売上高は前年度の約1・2倍の756億円に膨らんだ。
また、併設されたパサージュ広場は透明な屋根で覆われ、これまで商業が集中していた天神で「居心地の良い空間をつくる先駆けだった」(梶原さん)。博多大丸によると、開業当初は規制もありイベントは少なかったが、次第にクリスマスツリー設置や地域振興の物産展などの企画を実施。集客に一定の効果があったとみる。
天神の一等地という立地を生かしたオフィス機能も充実。福岡中小企業経営者協会は昨年4月、福岡市博多区から移転した。利用者の利便性向上や、今後集積が見込まれるITやベンチャー企業の入会を促進しようと入居。移転後、会員企業が約40社増えた。「天神1丁目にオフィスを構えることは、イメージの向上にもつながる」。同協会の古賀正博常務理事は言う。
天神地区では、明治通り沿いを中心に、老朽化したビルの建て替えを促進する「天神ビッグバン」の計画が進んでおり、今後は商業・オフィス集積が加速する。明治通りはエルガーラと300メートルほど離れているが、博多大丸の柚木和代社長は「天神の各百貨店共通のイベントをするなど、街ぐるみで集客につなげたい」と、新旧の再開発事業の融合で、盛り上がりを期待する。
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