「定年65歳以上」の企業は約18% 10年で3倍に、人手不足など背景
- 企業・経済
- 2018年5月14日
少子高齢化による労働力不足が深刻になる中、定年を65歳以上に引き上げた企業の割合が平成29年に約18%にのぼり、10年あまり前の約3倍に増えたことが12日、分かった。人材を確保したい企業と、できる限り長く働きたいシニア世代の意欲が背景にある。
厚生労働省の調査によると、一律定年制を定めている企業のうち、定年を65歳以上としている企業の割合は昨年に17・8%にのぼり、17年(6・2%)よりも11・6ポイント上昇した。
業種別の割合では、宿泊・飲食サービス業が29・8%で最も高く、ほぼ3割近くになった。運輸や建設、医療・福祉などの業種も20%を超えた。機械化が難しく、人手が必要になる業種ほど、定年を延長する傾向が強いとみられる。
高年齢者雇用安定法は、従業員の定年の下限を60歳と定める一方、平成24年の改正で希望者全員が65歳まで働ける制度の導入を義務付けた。このため、企業は再雇用か、定年の65歳以上への引き上げや定年廃止で対応する必要がある。近年は、景気回復に伴って若年層の採用が難しくなっていることもあり、安定した雇用条件を用意することで優秀なシニア人材を活用しようとする企業は今後も増える見通しだ。
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独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が昨年12月~今年1月、65歳以上に定年を延長した1840社を対象に調査をしたところ、定年引き上げの理由(複数回答可)は「人手の確保」(75%)が最も多く、「60歳を超えても元気に働けるから」、「優秀な社員に引き続き働いてほしいから」と続いた。
大手企業では、サントリーホールディングスや大和ハウス工業、ホンダなどがすでに定年の延長に踏み切った。昨年7月には明治安田生命保険が「30代の社員が少なく、10年後に管理職が不足する可能性がある」とし、平成31年からの延長を決めた。
定年延長の利点は、高齢社員が持つ高度な技能や豊富な人脈を若手社員に引き継ぐとともに、安心して働ける環境を整備することで人材流出を防ぐことにもある。
一方、定年延長は企業に
とっては総人件費の増加につながる。調査では、なお約80%の企業は定年を延長せず、嘱託社員などとして再雇用する仕組みを採用。国は定年を延長した企業への助成制度を設けているが、導入をためらう企業も多い実態が浮き彫りになっている。
就労の仕方や賃金体系の見直しが長期雇用の課題だ。大和ハウスの広報担当者は「今ある人材を最大限活用し、労働生産性が上がるのであれば問題はない」と強調。ホンダは時間外手当の割増率を見直したり、国内出張の日当を廃止したりすることで原資を捻出し、総人件費の増加を避けた。平均寿命が延び「人生100年」といわれる時代となり、国家公務員についても政府が定年延長の検討を始めている。
近畿大経営学部の中島敬方教授(雇用政策論)は「日本では年功賃金を採用する企業が多い以上、定年延長の一律的な義務付けは現実的ではないが、シニア世代の働き方の選択肢を増やすのは時代の要請でもある。シニア世代の働く意欲を引き出すとともに、人材を活用しやすい制度設計を考えていくべきだ」としている。
若い世代が勤まりにくい会社中心に増えたのだろう。
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