「申し訳なく、もったいなく」 イチゴ人気に生産追いつかず…沖縄・宜野座村、増産へ工夫
- 企業・経済
- 2018年3月5日
沖縄県宜野座村の特産物として、イチゴが脚光を浴び始めている。紫外線や高温に弱く、従来は「沖縄で栽培は無理」とされた作物だが、村は栽培を始めた2003年以来、毎年の農業者研修の開催などで技術を高め、生産量を増やしてきた。近年、人気のイチゴ狩りでは申し込みの過半数を断っているなど需要に供給が追いついていない現状。16年には農家が生産組合を設立し、栽培15周年の今年1月には「イチゴの里宜野座村」宣言も実施するなど、産地化に向けた態勢が整いつつある。(北部報道部・又吉嘉例)
◆114人から1万6376人へ増加
「もう埋まっていますね」。2月22日、甘い香りが漂う村宜野座の志良堂いちご園で、志良堂治代表はすまなさそうに携帯電話を切った。イチゴ狩りの予約申し込みだという。「需要が絶対的に多く、農家は少ない。飛び込みのお客も多いが入れられない。申し訳ないし、もったいないですよね」
イチゴ狩りの人気は年々高まっている。シーズンは毎年12月~翌5月。村の集計によると、村農業後継者育成センターがイチゴ狩りを始めた06~07年は114人だったが、その後、右肩上がりに増え、16~17年は同センターと4農家に計1万6376人が訪れた。
一方、出荷量は増加傾向にあるものの、伸び悩む。初出荷した03~04年は約900キロ。そこから約10年間、千~2千キロ台で推移し、同センターから農家が独立した14~15年には過去最高の8041キロに達したが、16~17年は約5千キロにとどまった。「いちご日本一」を誇る栃木県真岡(もおか)市の15年の年間生産量、約6850トンと比べても「産地」への道のりは遠い。
出荷量が「足踏み」しているのは栽培技術が完全に確立されていないためだ。村イチゴ生産組合の妻鹿(めが)晋介代表は「年により出来、不出来がある。一年中気が抜けない」と指摘。沖縄ならではの不利な面もある。「新苗作りでしっかりした苗が確保できるかどうかが、後の生産量を左右するが、高温多湿で病気や虫が多い。定植の時季に台風が重なる場合もある」
◆小売店への出荷も注力
そこで農家は技術や品質の向上を目指し連携しようと16年5月、組合を結成した。現在、6戸が加入中。来年度は8戸に増える。妻鹿代表は「イチゴ狩りでも空いているハウスを紹介し合うなど連携できる。家族や仲間の思い出づくりのイベント。いっぱい食べて満足してもらいたい」と望む。名桜大学の支援を受け、今月にはネット上で予約できる仕組みも整える。
妻鹿代表自身はケーキなど業務用や小売店への出荷だけに注力する。「県外産と比べて鮮度も良く、完熟で出せるので甘みも強い。生産量を増やし、県内シェアを高めることで宜野座のイチゴをアピールしたい」と意気込む。
宜野座村も毎年、全国では栃木県に次ぐイチゴの産地の福岡県から講師を招き、農家に技術指導させている。18、19の各年度には沖縄振興一括交付金を活用し、ハウスを1棟ずつ新設する。村産業振興課でイチゴを担当する伊芸徳二さんは「県内のスーパーに、常に村産のイチゴが並んでいる状態が理想。出荷を増やし、まずは村内の『道の駅ぎのざ』に常時あるようにしたい」と展望を話した。
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