コメ高騰、備蓄米放出は「不足分補うだけで値下がり期待できず」…生産量不足の見方も
- 政治・経済
- 2025年3月17日

コメの価格高騰が山形県内でも続いている。業者間取引価格の上昇で、スーパーの販売価格が1年前より8割値上がりした銘柄もある。放出が決まった政府備蓄米は今月下旬にも店頭に並ぶとみられるが、価格抑制の効果は一時的との見方もあり、先行きは不透明だ。(須永光)
1・8倍
山形市松見町のスーパー「ヤマザワ松見町店」の売り場には、県産米を中心に2024年産米が並ぶ。比較的安価な主力品種「はえぬき」でも5キロ・グラムで3480円。1年前の1・8倍ほどに高騰している。秋葉健一副店長(42)は「仕入れ値が高止まりしている。お客様には申し訳ない」と心苦しそうに話す。
農林水産省によると、集荷団体が卸売業者に販売する24年産米の「相対取引価格(卸値)」(玄米60キロ当たり)は、全銘柄平均が毎月値上がりしている。県産主要3銘柄は昨年9月に初めて2万円を超えて以降、最高値を更新し続けている。
例えば、ブランド米「つや姫」の1月の卸値は、前年同月比で54%上昇し2万8756円に達した。前月比でも2%増。小売価格に響いている。
落ち着きは「一時的」
価格高騰の背景には、昨夏以降の全国的なコメの品不足がある。当初は「新米が出回れば、流通量が回復し価格は下がる」とみられていた。だが、品薄感のピークが過ぎても値上がりが続いている。
JA全農山形によると、価格高騰に乗じた投機目的で、一部の業者が買い占めている可能性があるという。外食産業と取引する卸売業者が安定供給を目的に在庫を確保する動きもみられる。県内では、農家が集荷業者を通さずに親戚や知人に直接コメを配る習慣もあるといい、担当者は「農家全体で相当量の在庫を抱えている可能性もある」とする。
政府備蓄米の入札は今月10~12日に行われ、月内にもスーパーなどに並ぶ見通し。山形市の主婦(80)は「スーパーのチラシを見比べて、なるべく安いお米を買っている。備蓄米放出の判断は正直遅いけど、少しでも値下がりすればいい」と期待する。
東北農林専門職大の小沢 亙(わたる) 教授(農業経済学)は「価格高騰を一時的に落ち着かせる効果がある」と指摘。ただ、放出量は不足分を補うだけだといい、「値下がりは期待できない」としている。
今年は増産へ
そもそも生産量不足との見方もある。
JA山形中央会の大武義孝常務理事は2月26日の報道機関との懇話会で、インバウンド(訪日客)増加による外食需要の高まりなどを踏まえ、「そもそも生産量が足りていない」と指摘。価格高騰については「買い控えが起きれば、生産者にとってマイナスだ。(農水省の)需要と供給の見通しに問題はなかったのか」と述べ、需給予測の精度向上が必要との考えを示した。
コメ政策を巡っては、政府は減反制度を18年産米から廃止した。だが、過剰生産による値崩れを防ぐため、県や農業団体は、農水省が毎年示した需給見通しなどを基に独自の「生産の目安」を決めている。
コロナ禍で外食需要が減ったのを背景に減産基調にあった県産米も、25年産は6年ぶりに増産に踏み切る。目安は約1万トン増の32万6300トン。県農政企画課は「目安をフル活用した生産を農家に呼びかけたい」としている。
読売新聞より転用
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