トヨタの新型「クラウン」はネット接続を標準装備 何ができる?
- 企業・経済
- 2017年12月22日
「トヨタは、コネクテッドカー(つながる車)のサービスを本格的に始める。自動車は今後、単なる移動手段ではなく、街・人・社会とつながるデバイスになるだろう」――トヨタ自動車の社内カンパニー、コネクティッドカンパニー コネクティッド統括部の山本昭雄部長はこう強調する。
トヨタはコネクテッドカーへの取り組みを続けており、自動車向けの通信モジュール「DCM」(Data Communication Module)を開発。カーナビに話しかけるだけでニュースや天気などを検索できるテレマティクスサービス「T-Connect」などを展開してきた。
ただ現在、これらを実装しているのは高級車「レクサス」ブランドが中心。実際に車道を走っているのは「数十万台程度」(山本氏)にとどまっている。
コネクテッドカーの普及に向け、トヨタは2018年夏発売予定の新型「クラウン」に車載通信機を標準装備する。「トヨタ初の本格的コネクテッドカー」と銘打ち、フラッグシップモデルとして大々的に展開する計画だ。
●新型「クラウン」、ネットにつながって何ができる?
新型クラウンは、ネットにつながることで何ができるのか。
山本氏は、「都市部への人口集中による渋滞の悪化、少子高齢化による移動困難者の増加といった社会的課題を解決する機能を備えた」という。
具体的には(1)先行車のスピードを取得し、自動で追従走行することで渋滞を解消する機能、(2)信号変化などの情報を取得してドライバーに注意喚起する機能、(3)過去の走行履歴から行き先と走行ルートを予測し、交通規制や渋滞の情報を事前に提供する機能――などを実装する。
位置情報データと自然言語認識技術を組み合わせ、ドライバーが「近所にお勧めのお店はある?」とカーナビに質問すると、検索結果をレコメンドする機能も搭載予定。過去の走行履歴を基に行き先を予測し、走行ルート上の規制・渋滞情報や最寄りのスーパーの特売情報などを合成音声で伝える機能も備える予定だ。
車の警告灯が点灯すると、管理システム「トヨタスマートセンター」が異常要因を分析し、走行可否判断などのアドバイスを自動生成する「eケアサービス」や、エアバッグ連動型の通報システムも備え、安全性を高めたという。
新型クラウンには、LINEのAI(人工知能)プラットフォーム「Clova」と連携し、コミュニケーションアプリ「LINE」にメッセージが届いた際に合成音声で読み上げる機能も搭載される。ドライバーが口頭で返事をすると、内容を自動入力した上で送信してくれるという。車を運転しながら、音声だけでLINEのやり取りができるというわけだ。
山本氏は「LINEへの対応は、シニア世代だけでなく若い世代にもクラウンに乗ってもらうため」と意図を説明する。
●データを生かしたビジネス・社会貢献にも注力
車両から取得したビッグデータを生かしたビジネスにも取り組む。アクセル、ブレーキ、ABSなどの作動履歴をクラウドに集積し、故障の診断や予測サービスに応用する。
データは地方自治体にも共有し、事故防止に向けたインフラ整備に生かす。例えば、北海道や東北地方など降雪や道路凍結が多い地域でのABS作動状況を分析し、融雪剤を散布する地点を算出するなどの取り組みを行う計画だ。
ドライバーごとの運転の特性を分析し、運転の頻度や安全性に応じて保険料が変動する「運転挙動反映型テレマティクス保険」もあいおいニッセイ同和損害保険と共同開発。18年1月に発売する予定だ。
山本氏は「ゆくゆくは、走行データとカメラ画像から自動運転用の地図を生成する技術の実用化も目指したい」と意気込む。
「これからは“いいクルマ”の在り方が変わってくる。今後は、走る・曲がる・止まるといった性能の高さだけでなく、新サービスなどの『コト作り』に貢献できる自動車が求められるだろう」
一言コメント
どのくらいニーズがあるのか楽しみだ。
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