英労働党党首・スターマー氏、どんな人? 「規律の鬼」、不安は外交
- 国際
- 2024年7月6日
英国総選挙で最大野党・労働党の勝利を受け、キア・スターマー党首(61)が新しい英国の「顔」となる。14年ぶりの労働党政権のリーダーはどのような人物で、英国をどう変えるのか。
スターマー氏は1962年9月、ロンドンの労働者家庭に生まれた。父は工具職人、母は看護師。両親とも労働党支持者で、キアの名は労働党創設者の一人でもある社会主義者キア・ハーディにちなんで名付けられた。だが少年時代はこの名前が友人にからかわれ、「なぜ僕はピートやデーブではないのか」と悩んだという。
法廷弁護士(主に法廷で答弁する弁護士)や検事を経て、2015年に下院議員に初当選。事務弁護士(主に事務処理をする弁護士)だった妻ビクトリアさんとの間に2人の子供がいる。趣味はサッカーで、イングランド・プレミアリーグで、冨安健洋選手が活躍するアーセナルの熱烈なファンでもある。
英メディアによると、あだ名はミスター・ルールズ(規則)。規律に厳しく、新型コロナウイルス流行中のパーティー参加問題で22年に罰金刑を受けたジョンソン首相とスナク財務相(いずれも当時)を批判し続けてきた。
だが、実は自身も若い時代に「警察沙汰」になったことがある。英紙ガーディアンによると、スターマー氏は大学時代に友人と一緒に南フランスの海岸に行き、アイスクリームを売ってひともうけしようとした。だが無許可販売だったため友人は警察に逮捕され、スターマー氏も事情聴取を受けた苦い思い出があるという。
では「規律」に厳しいリーダーの課題は何か。
労働党は6月に発表したマニフェスト(公約)で、変革への最初のステップとして6点の方針を示した。それは、①経済の安定②NHS(国民医療サービス)の待機時間短縮③新しい国境警備組織の発足④公営の再生可能エネルギー会社の設立⑤反社会的行為の取り締まり強化⑥教員6500人の増員――だ。
だが、外交・国防はこの6点に入っていない。英誌ニュー・ステーツマンは「スターマー氏の最大の不安材料は外交。国際情勢に関心がない」と分析する。
実際に外交方針の揺らぎも目立つ。これまでは、パレスチナとイスラエルの和平プロセスが進めば、パレスチナを「国家承認する」意向を語っていた。だが最近はイスラエル寄りの米国に気を使って「承認を延期する」(英紙タイムズ)方針に変わり、党内の親パレスチナ派から不満が高まっているという。
スターマー氏は9~11日に米ワシントンで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で「外交デビュー」する予定だ。英BBC放送は、「内政に焦点を当てた総選挙を終え、彼は政治がグローバルであることを早くも知ることになる」と評している。【ロンドン篠田航一】
毎日新聞より転用
コメントする