「人気隠れ1位」高級魚ミナミマグロの価格急落、ほとんどの漁船が赤字に
- 政治・経済
- 2024年7月1日
クロマグロに次いで高級とされるミナミマグロの流通価格が急落し、漁業者が悲鳴を上げている。魚市場では高級魚扱いだが、認知度が低く需要は低下。遠洋マグロはえ縄船の船主は漁港の水揚げ金額の急落から、大半が赤字操業を余儀なくされている。
◆市場の評価が高い「通好み」
南半球で漁獲され、国産では冷凍ものが流通するミナミマグロは、上質のトロや赤身が取れることから、東京・豊洲市場(江東区)などで高く評価されている。豊洲の競り人は「クロマグロよりも赤身が甘く、すしでは酢飯との相性が抜群。本マグロの人気は根強いが、(ミナミマグロは)隠れた1位」と太鼓判を押す。
ただ、消費者へのアピール度はいまひとつ。市場関係者は「クロマグロやメバチマグロに比べて認知度が低く、どこで売っているのか、食べられるのか、一般にはあまり知られていない」と話す。ミナミマグロが陸揚げされる静岡県の焼津港や清水港、神奈川県の三崎港周辺ではすし店などでおなじみだが、東京都内をはじめスーパーなどではお目にかからない。「通好み」とも言える。
◆流通量回復で価格急落
遠洋マグロはえ縄漁業などの全国組織、日本かつお・まぐろ漁業協同組合(東京)によると、2022年度は新型コロナウイルス禍でマグロの輸入が減り、冷凍マグロ全体に品薄感があったため、清水港でのミナミマグロの水揚げ価格は上昇した。
ところが、23年度は流通量の回復もあって、同港でのミナミマグロの大型魚(40キロ以上)は1キロ当たり1500円ほどと、価格が前年度に比べ4割急落した。クロマグロやメバチマグロと比べても落ち込み幅が大きく、漁業者へのダメージは大きい。
ミナミマグロを漁獲するマグロはえ縄漁船は、流通の大半を占めるメバチマグロも多く漁獲する。ただ、ミナミマグロ価格急落や、燃油や資材の高騰、円安などにより、「(両魚種を漁獲する)およそ75隻の漁船は1隻当たりの水揚げ金額が7000万円ほど減り、ほとんどの漁船が赤字。こんなことは過去になかったのではないか」(同組合)と窮状を語る。
◆漁の継続に危機感、認知度向上へ
日本かつお・まぐろ漁業協同組合は、このような魚価安が続けば「漁業経営を継続できず、漁業関係者だけでなく、流通も含めて大きな影響を受けることになる」と危機感を募らせる。ミナミマグロを漁獲する漁船は、遠洋マグロ漁船の半数を占める。スーパーなどで販売される主力のメバチマグロの漁獲・流通量も左右しかねないだけに、食卓への影響も心配される。
こうした状況を回避し、漁を継続させるため、同組合はミナミマグロの認知度向上に乗り出した。6月末からユーチューブで動画を公開。「ミナミマグロはどんな魚か、味の特長や解凍方法、どこで買えて、どこで食べられるのか、たくさんの情報を発信していきたい」と意気込む。
農林水産省のまとめによると、ミナミマグロの年間漁獲量は2023年が約6100トン。クロマグロの半分ほどで、メバチマグロと比べると4分の1程度だが、資源が回復傾向にあり、近年の日本の漁獲枠も増加傾向にある。クロマグロの次に価値あるマグロとして今後も利用していくためには、魚名やおいしさのアピールもポイントになりそうだ。
時事通信より転用
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