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留置人死亡、ロマンス詐欺…高止まりする「不祥事」防げ  「警察の中の警察」に大号令


全国の警察官や警察職員の懲戒処分者数が高止まりしている。令和5年は前年に留置場で勾留中の男性を死亡させたとして、愛知県警で大量の処分者が出たほか、ロマンス詐欺や特殊詐欺に関与した警察官が免職処分を受けるなど、信じがたい「不祥事」が相次いだ。新年度早々、トップの露木康浩・警察庁長官自らが「警察の中の警察」と呼ばれる監察担当者に大号令をかけるほど、警察当局の危機感は強い。

■首席監察官会議

「国民の信頼に応えるため、高い規律と士気を有する職場の構築に努めるように」

4月9日、東京・霞が関にある警察総合庁舎の7階大会議室で開かれた「全国首席監察官会議」。47都道府県警や皇宮警察の監察責任者が参集する中、露木氏が訓示に立ち、高止まりした懲戒処分者数の削減を直接厳命した。

参加者からは「警察ではないが、名古屋の入管施設で(3年に)外国人女性が病死した問題は国会でも取り上げられ、後を引いている。明日はわが身とすべき部分もある」と気を引き締める声が漏れたという。

5年に懲戒処分された全国の警察官や警察職員は266人。10年ぶりに増加した4年より10人減ったものの、新型コロナウイルスの5類移行に伴う酒席の増加で、酒気帯び運転など飲酒関連が一気に30人増えたほか、盗撮やセクハラといった「異性関係」が89人と依然として突出している。中でも、最も問題視されたのが愛知県警の留置管理上の不祥事だった。

■異例の大量処分

岡崎署の留置場で4年12月に勾留中の男性が死亡する事故が起き、暴れる男性を1人用の保護室に収容して体を拘束する「戒具」を計約144時間使用。糖尿病などの持病があったが薬を与えなかったり、医師の意見を聞いていないのに聴取したとする虚偽の書類を作成したりして、腎不全で死亡させた。

男性が脱水症状に陥り、蹴られるような様子も監視カメラ映像に残されていた。県警は留置主任官の警部ら8人と退職者1人を書類送検したほか、署長ら27人を懲戒や懲戒以外の訓戒などの処分としており、一度の処分人数としては異例の規模となった。

このうち11人が、重い懲戒処分の対象となったことを教訓に、県警は要件を満たさないまま戒具を長時間使用しないため、使用が一定時間経過すると県警本部や署の幹部に通知がいくシステムを導入した。

折しも警察庁は留置事故防止に向け、脈拍や血圧、呼吸、体温などを計測して異常を見つける非接触型のセンサー(情報収集装置)を6年度に試験導入するため実験を開始。7年度以降の全国配備を計画していただけに「出鼻をくじかれる最悪の事態」(同)だった。

■世相反映した犯罪も

5年全体の懲戒内容としては、最も厳しい免職が15人増の42人、それに次ぐ停職も7人増の54人。今年2月の記者会見で昨年を振り返った露木長官は「免職と停職が増えている点を重く受け止めなければならない」とした上で「警察組織の規律が弛緩(しかん)するようなことがあってはならない」と険しい表情で述べていた。

一方、世相を反映した事件への関与も目立つ。

大阪府警の巡査が交流サイト(SNS)でカナダ人の男性医師らを名乗ってメッセージを送り、佐賀県と埼玉県の女性2人から現金計90万円をだまし取って佐賀県警に逮捕され、免職となったケースは「ロマンス詐欺」に該当する。

秋田県警の巡査長が譲渡目的で金融機関に口座を開設し、キャッシュカード4枚を詐取して免職処分を受ける事件もあった。口座は還付金詐欺の送金先に使われており、「特殊詐欺」を助長。警察内部にまで詐欺が蔓延(まんえん)している実態が浮かび上がった。

大分県警の巡査は、病死した別府市の高齢女性宅で検視中に鍵を盗み、改めて家屋に侵入して貴金属を窃取し、免職となっており、増加の一途をたどる「孤独死」を背景にした「警察官にあるまじき愚行」(警察幹部)も発覚した。

産経新聞より転用

産経新聞

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