復権進む従来ビール、酒税改正で5割増も サッポロは恵比寿に新醸造所、キリン新ブランド
- 政治・経済
- 2024年4月3日
令和8年のビール系飲料の税率一本化に向け、税率が引き下げられる従来のビール(狭義のビール)を巡り、大手4社の需要獲得競争が活発化している。2日にはキリンビールが新商品を発売し、サッポロビールは新たな醸造所の開業イベントを開いた。人口減や「アルコール離れ」などで酒類市場が縮小傾向にある中、酒税改正を追い風にビールの販売は伸びが顕著で、復権が進んでいる。
■歴史や情報発信の拠点がオープン
「ビールの可能性は無限大だ」。サッポロビールのおひざ元、東京・恵比寿で2日に行われた新しい醸造所「YEBISU BREWERY TOKYO」(エビスブルワリートウキョウ)の開業記念イベント。同社の野瀬裕之社長はビールの将来性を熱っぽく語った。
同施設は3日に開業するが、恵比寿でのビール生産は、昭和63年に都外へ工場を移転して以来の復活となる。主力の一つであるエビスビールの歴史を学んだり、限定品を含むエビスブランドを飲んだりできる情報発信拠点としての機能も併せ持つ。野瀬氏は今回の取り組みについて「第3のビールや発泡酒ではできないこと」と強調した。
一方、キリンビールは2日、17年ぶりの新ビールブランド「キリンビール晴れ風」の発売を開始した。名称の通り華やかな香りで飲みやすいのが特徴。ビール離れが進む若年層の取り込みを狙う。売り上げの一部を花見や花火大会、祭りなど、ビールとともに楽しまれることが多い風物詩の保全に活用し、「ビール文化」の維持にも一役買う。
■8年には税率が統一
ビール系飲料を巡っては段階的に税率改正が進んでいる。昨年10月には2回目の改正で、狭義のビールの税率が引き下げられ、第3のビールは引き上げられた。8年には発泡酒も含め税率が統一される。
狭義のビールの販売数量を公表しているサントリーとサッポロビールによると、昨年10月以降の販売は前年同月を軒並み上回っており、1・5倍程度に達する月もある。サワーなど他の酒類が台頭し〝冬の時代〟が続いていたビールが息を吹き返している。
先行してビール事業に傾注してきたアサヒビールは、令和3年に主力のスーパードライに次ぐ「アサヒ生ビール(通称マルエフ)」を発売。今年3月にはコンビニエンスストア限定だった生ジョッキ缶初のプレミアムビール「アサヒ食彩」の販売を全業態に広げた。
サントリーも「サントリー生ビール」を中身も含めリニューアル。生産体制を拡大して3月からは瓶とたるでも発売するなど攻勢を強める。手ごろな価格を武器に、6年の目標販売数量を前年実績の1・5倍となる600万ケースに設定した。
産経新聞より転用
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