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香港の国家安全条例、レッドラインは当局の判断次第 海外亡命者にも影響


香港立法会(議会)は19日、2020年に中国によって導入された香港国家安全維持法(国安法)を補完する国家安全条例案を全会一致で可決した。23日に施行される。外国人や外国組織を標的にした法制度といえ、香港に拠点を置く日本の企業やメディアは早急な対応を迫られている。

背後に中国政府

「歴史的使命を完成させた」。香港トップの李家超行政長官は可決後、社会の安全と安定が保障されたと国安条例制定の意義を強調した。今後は経済の発展に全力を尽くすと表明したが、実際には国安条例の制定でビジネス環境の悪化を懸念する声が高まっている。

国家の安全に危害を加えるスパイ活動や、国家秘密の窃取といった犯罪行為の定義のあいまいさが背景にある。

「驚くべきことに国安条例は、国家の安全や国家秘密の範囲を行政長官が決められると規定している」と指摘するのは、香港の元民主派区議で日本在住の葉錦龍氏(36)だ。行政長官の背後に中国政府が控えているのは言うまでもない。

国安条例施行後は「中国本土で頻発しているような、スパイ容疑での邦人拘束が香港で起きてもおかしくない状況になる」と葉氏はみる。条例が規定するスパイ活動罪の最高刑は禁錮20年だ。

メディアにも影響

取材内容が国家秘密と認定された場合も、国家秘密窃取罪(同禁錮7年)に問われかねない。

メディアへの影響も無視できない。

香港で活動する日本人ジャーナリストが、中国や香港政府を批判する記事を書いた場合、香港警察に「政府への憎悪をあおる内容だ」として、扇動の容疑で逮捕されるケースもあり得る。葉氏によると、記事が香港で発行されていなくても、ネットを通じて香港で読むことができれば、摘発対象となる可能性がある。 葉氏は「国安条例の問題点はレッドライン(越えてはならない一線)がどこなのか、当局の判断に委ねられていることにある」と警鐘を鳴らす。

葉氏は海外在住の元香港区議らで構成する「香港公民代表会議」の日本支部代表を務めているが、香港当局は同会議を「海外反中組織」に指定しており、運営者の葉氏自身、国安条例違反で立件される可能性があるという。(藤本欣也)

国家安全条例

香港基本法(ミニ憲法)23条で香港自らが定めなければならないと規定されている条例。香港国家安全維持法が国家分裂、テロ、海外勢力と結託し国家の安全に危害を加える行為などを禁止しているのに対し、国家安全条例は①国家秘密の窃取やスパイ活動②国家反逆③中国共産党や中国・香港政府への憎悪、侮蔑を扇動する行為④海外の政府や政党、国際組織と協力して中国、香港の政策に影響を与えたり、選挙に干渉したりする行為⑤国家の安全に危害を加える組織への参加などを禁じている。最高刑は終身刑。

 産経新聞より転用


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