「陸上選手ではないから」 脱・走り込みで成長した京都国際の投手陣
- スポーツ
- 2024年3月14日
■2024春 担当記者の「ココを見て」③京都国際
野球、とりわけ投
陣の練習といえば「走り込み」がすぐに浮かぶ。特に冬場は下半身強化や体力作りのために――。だが、京都国際の投手陣に、そんな姿は見られなかった。
「試合で勝てるように、実戦を想定した練習が多いです」。そう教えてくれたのは、主将でエースの中崎琉生(るい)だ。
担当コーチによると、京都国際でも以前は走り込みのメニューが多かった。10年ほど前から少しずつ減らし、今では短距離ダッシュはあるが、ロードワークなど長い距離を走ることはほとんどないという。
「陸上選手ではないから」とコーチ。股関節や肩甲骨周りの可動域を広げたり、球をはなす際の爆発的な力を高めたりする方が、投球のパフォーマンス向上につながると考える。
力を入れるのは、ウェートトレーニングを始めとした筋力強化。ただ筋力をつけるだけでなく、柔らかく、大きく動かせるようにメニューが組まれる。
例えば、12月は体重増加を目的に筋肥大を起こす。1月には瞬発力を高めるためのジャンプ系のメニューが加わり、スピードも意識する。2月はシーズンインを見据え、大きくなった筋肉をうまく使うために、実戦的な動きを入れていく。
取材に訪れた2月下旬は、ライオンのように四つんばいになって肩関節や股関節を意識して手足を動かしたり、投球動作に近い動きで重さ3キロのメディシンボールを投げたりしていた。中崎は昨秋から体重が5キロ増え、「力強さが増した」と手応えを口にする。
京都国際は2021年夏、2年生左腕の森下瑠大(横浜DeNAベイスターズ)らを擁し、全国選手権で4強入りした。
「森下はストレッチで下半身のケガが改善した。ただ、筋力が足りず、パフォーマンスを満足に出し切れなかった」とコーチは振り返る。
プロ野球でも「根性論」のように走り込みをさせることに懐疑的な考えが広がり、ここ1、2年でさらに「走り込み→筋力強化」へのシフトを進めた。
小牧憲継監督(40)は、高校生が以前に比べ、子どもの頃に海や川などで遊んだ経験が少ないと感じる。「走ることが不要というわけではない。ただ、何を優先するか。日常の遊びで柔軟性や可動域を身につけていないからこそ、必要だと思った」
固定観念を捨て、柔らかく鍛えた体で春に臨む。(大坂尚子)
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第96回選抜高校野球大会が18日に開幕します。担当記者が取材をする中で魅力を感じ、読者の皆様に「ココを見て!」と推す選手やチームを紹介します。
朝日新聞社より転用
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