トルコ地震1年、今もテント生活 インフラ復旧途上、過酷な生活
- 国際
- 2024年2月6日
死者・行方不明者がおよそ6万人に上ったトルコ・シリア地震は、6日で発生から1年となる。両政府の被災者支援策は不十分で、いまだにテント生活を余儀なくされている人もいる。多くの市民が故郷を離れており、元の生活を取り戻す道のりは険しい。
「言葉では説明できないくらい、この1年はつらかった」。最も深刻な被害を受けたトルコ南部ハタイ県に住む自動車修理工、ムティ・タシャルさん(58)は3日、オンライン取材に厳しい表情を見せた。自宅は地震で傾く被害を受けたものの、何とか一家は逃げ出せた。しかし家はその後の余震で崩壊。約1カ月間、敷地内のビニールハウスで暮らした。
元の自宅の近くで少しでも良い環境を確保したい。タシャルさんが頼ったのが民間のコンテナ型仮設住宅だった。中古の1戸を貯金をはたいて6万トルコリラ(約29万円)で購入したものの、広さは15平方メートルしかないワンルームタイプ。そこに妻(54)、長男(33)、長女(28)、次女(21)の計5人で暮らす。ベッドを置くと他にスペースはなく、プライバシーも確保できない。電気は雨が降れば数時間停電し、水道も汚染されて安全ではないという。
ハタイは地震前、人口約165万人だったが、今は約75万人が別の場所に移り、約90万人が仮設住宅などで暮らす。住民は半分近くに減った。この1年でがれきの処理は進んだものの、新規の住宅建設はまだ始まったばかりだ。道路の修復も終わっていない。交通渋滞がひどく、タシャルさんは震災前、職場まで車で30分だったが、今は1時間以上かかる。
トルコ南部では地震で損壊した住宅が計約68万棟とされる。エルドアン大統領は昨年5月の大統領選で、「1年以内に32万戸の住宅を建設する」と公約に掲げた。ところが今月になって「3月までに約7万5000戸」に大幅に下方修正し、それすらも実現が危ぶまれている。
タシャルさんのおい、アリさん(26)は仮設住宅を購入する資金がなく、いまだにテント暮らしだ。2月に入ると凍えるような寒さで、毛布をいくらかぶっても寝付けない。高熱を出す風邪に見舞われることも度々ある。タシャルさんは、政府の対応は「全くもって不十分」と考える。「でも私たちの土地はここしかない。暮らしを向上させるすべを考えなくては」と話し、ため息をついた。
地震ではトルコで約5万3000人、シリアで約5800人が死亡した。内戦が続くシリアでは援助を届けるのも容易ではなく、トルコ以上に復興の遅れが懸念されている。【エルサレム三木幸治】
毎日新聞より転用
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