米のイラン施設攻撃、民間人ら16人死亡 バイデン氏「紛争求めず」
- 国際
- 2024年2月3日
バイデン米政権は2日、米兵3人が死亡したヨルダンの米軍基地攻撃への報復として、イラクとシリアの7施設にある計85以上の標的に対して空爆したと発表した。米国から戦略爆撃機B1を出撃させ、イランの革命防衛隊や支援を受ける武装組織の軍事施設を標的とした。イラン国内への攻撃は避けたが、今後も攻撃は続くとされ、域内の緊張は高まっている。
バイデン大統領は声明で「我々の報復はきょう始まった。今後もタイミングと場所は我々が選んで継続する」とし、さらなる報復を宣言した。「米国は中東や世界のどこでも紛争を求めない。しかし、我々に危害を加えようとする全ての者に伝える。米国人に危害を加えるなら我々は報復する」とも述べた。
中東を管轄する米中央軍などによると、米東部時間2日午後4時ごろ、イラクの3施設、シリアの4施設に対し約30分間にわたり、125発以上の精密弾を撃ち込んだ。米国から出撃したB1など多数の航空機が使われた。攻撃対象には指揮統制拠点、情報活動の施設、ロケットやミサイル、無人航空機(ドローン)の保管庫などが含まれた。
シリア国境に近いヨルダン北東部の米軍基地「タワー22」が1月28日に受けたドローン攻撃では、米兵3人が死亡し、40人以上が負傷した。米政府はカタイブ・ヒズボラなど複数の武装組織の連合体「イラクのイスラム抵抗運動」による攻撃との見方を示していた。米軍は今回の報復攻撃の発表文で、これらの組織の連携や軍事面での支援を担うイラン革命防衛隊の対外工作部隊「コッズ部隊」も名指しした。
米政府によると、パレスチナ自治区ガザ地区で戦闘が始まった昨年10月以降、イスラエルの攻撃を受けるイスラム組織ハマスへの連帯を示す親イラン武装組織による、イラクとシリアの駐留米軍などへの攻撃は165回以上にのぼる。親イラン勢力からの一連の攻撃で米兵に死者が出たのは、ヨルダンの基地への攻撃が初めてだった。
米軍はこうした武装組織の施設を空爆してきたが、小規模かつ散発的でさらなる攻撃を抑止する効果をあげられていなかった。
米国家安全保障会議のカービー戦略広報担当調整官は2日、記者団に、空爆は「成功した」と述べた。米統合参謀本部のシムズ中将は、標的を確実に狙い民間人の巻き添え被害をなくすために天候がよい日を選び、2日の攻撃に至ったと語った。結果の詳しい評価は3日以降になるが、空爆した施設内の戦闘員らに死傷者が出ることは予想していたという。米軍への攻撃を続ける能力を削ることができたとの見方も示した。
これに対し、イラク政府は3日、米軍の攻撃で民間人を含む16人が死亡し、23人が負傷したと声発表した。声明では、米国の攻撃について「イラクの主権に対する新たな侵略行為だ」とし、「イラクと地域の安全状況を破局の瀬戸際に追いやり、安定を確立するための努力を危うくする」と非難した。(ワシントン=下司佳代子)
朝日新聞社より転用
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